米国の医療改革
リーマンショック後の景気浮揚策の一つとして計画されたヘルスケアリフォームについての2010年にオバマ大統領に向けた報告書が公開されています。
最近米国のヘルスケア業界の話題として、ヘルスケアITのMeaningful Useという言葉が頻繁に出てきますが、元ネタは結局この報告書に行き着くようです。
全体で200億ドル(当時はざっくり日本円に換算して2兆円でしたが、今や円高で1.5兆円に目減りしているのがすこし変な感じです)という巨大な予算を使う予定のプロジェクトですから、この報告書で書かれていることは膨大で、大変読み応えがあるというか読むだけでかなり疲れるものです。
しかし、これを読むことでいままで漫然と思っていたことが実体はかなり違うということがわかりました。
いままで色々な所から聞く話として米国のヘルスケアITはものすごく進んでいて日本に比べて一歩も二歩を先に進んでいるという印象を持っていましたが、それはほんの一部の先進医療機関の話であって大部分はいまだ電子カルテやオーダリングのようないわゆるHISすら導入できていないところがまだたくさんあるというのが実情であるということです。
実際、この報告書にもでてくる退役軍人省(VA)やDoDあるいはカイザーパーマネンテはインターシステムズの顧客です。
私はこれらのお客様の状況が米国で当たり前に行われているのだろうとずっと想像してきたのですが、実は逆に例外だったということのようです。
そういうことなので、日本の状況が色々と遅れているとネガティブに考える必要はなく、米国にそんなに引き離されているわけでもない、いまから頑張れば十分キャッチアップ可能だということです。
あとこの計画で米国らしいなあと思うのは、
Lead to the creation of new hightechnology markets and jobs.
という目標で単にコストの削減ではなく雇用を増大するチャンスと捕らえるという考え方で、これは日本でも是非取り入れてほしい考え方だと思います。
そしてITアーキテクチャへの提言として注目すべきは、
医療システムの連携を行う際に従来の様にデータの標準化にフォーカスするのではなく、Metadata-Tagged Data Elementsを使った普遍的なデータ交換を目指すべきだという所です。
データ交換を考える時、誰もがまず標準を整えるべきと考えますが、医療ITにおいて現実問題としてそれがうまく機能したためしがなく(一定の機能を果たしている交換フォーマットももちろんありますが)、今後もその可能性は少ないだろうとの想定で違うアプローチを取るべきだとの提言だと思われます。
読む限りでは、XMLを使ったデータのタグ付けを想定しているようですが、必ずしもXMLベースであるとは断言していないようにも読めるところが少ししっくりきません。
この報告書が発表されてから1年くらい立ちますが、実際この部分に関して具体的な進展があったのかどうか調査不足で何とも言えません。
しかし、このアプローチもそう単純にはまとまってはいないとは思います。
いずれにしろ医療ITに携わる身としては、医療連携というのは万国共通のテーマだと思いますので、今後もウォッチすべき動向として注意していきたいと思います。