都道府県魅力度ランキングに構造的欠陥
ブランド総合研究所(代表取締役:田中章雄氏)が毎年発表している都道府県魅力度ランキングはゴミとしか言いようがない。この調査は各自治体について、どの程度魅力を感じますか?と問いかけ「とても魅力的」を100点としてスコアリングして都道府県別にランキングしたものだという。
この「都道府県魅力度ランキング」がいかにゴミであり、無意味で使えないデータなのかは「世界国連加盟196か国 魅力度ランキング」調査に置き換えて考えるといい。魅力を感じる国や地域はと聞かれて、想起されのは馴染みとあこがれのミックスになる。そういう要素が混じったものをランキングとしてまとめて最下位はどこだとかランクが上がったとか下がったとか騒ぐ。
世界魅力度ランキングに置き換えて日本が連続で一位で、米国が二位とか、取り上げて最下位がどこだったとかいうことに何の意味もないということが分かるだろう。
あまりよく知らない国や地域は知らなくてランクが低いし、身近すぎて魅力として挙がりにくいところもある。魅力はどうですかと全国約450万人の調査モニターの1%以下、3万5千人ほどの回答を得たとして、じゃあ、魅力的だとランクが上がった県の旅行者が増えるとか、農水産物のプレミアムなブランドが上がったりしているかとか具体的な得られる成果につながっているのかに繋がっているのかというと非常に疑問としかいいようがない。
都道府県ランキングは北関東や佐賀や徳島などの中間地域のランクが構造的に低くなる欠陥調査である
田中章雄氏は、産経新聞報道によると「私に怒ってもダメ」と主張されているそうだが、これは、田中氏とブランド研究所による調査が構造的な欠陥があることを理解していない問題が大きい。
大和総研 主任研究員の鈴木文彦氏によるTwitterでの投稿に答えがある。
鈴木文彦
@Fumihiko_SUZUKI
我々は乗り換えなしでいける範囲で国土を認識していないか?仙台人は日本を上下に認識。南端は東京だが白河越えれば広義の東京。西日本はイメージが薄い。関西人は日本を東西に認識しており東北のイメージが湧かない。北海道はフェリーで行けるので東北より認知度が高いが、北国といえば北陸をさす
人口の多い、関西人からすると、関東は、東京と神奈川が強く見え、千葉埼玉はそれなりに存在感が大きいが、茨城、栃木、群馬は意識から抜けがちになる。仙台から見たら西日本はデフォルメされる。山口県が低くなっているのは戊辰戦争の影響とか考えられうる。
東京人からすると全国各地に直通で行けるわけだが、関西人が北関東をイメージできないように東京人からイメージされにくい地域ができてくる。佐賀県は東京人からすると移動する時も福岡空港からとなり、イメージが持たれにくい。また、鳥取と島根は知って想起するけど右と左はどっちか分からないなどということが起こる。
ブランド総合研究所の田中社長は、最下位となった栃木県の知事から"抗議"を受けた(上記 産経新聞)そうだが、これは栃木県の知事が正しい。都道府県魅力度ランキングは構造的な問題を抱えており、最下位がどうなったとか発表する価値がなく、それがニュースになるというのはマスコミがデータを読めないからにほかならないからだ。
ブランドランキングは、桃、イチゴ、和牛などの特定産品に絞らないと無意味
本調査会社の社長の田中章雄氏は地域ブランドのコンサルティングと執筆もされ、農業技術通信社に連載記事がこう掲載されている。
平成の大合併が大詰めを迎えていますが、これによって「地域」というブランドが見直されつつあります。これは、農産物や加工品のブランド力を高めるには非常に大きなチャンスと言えます。地域のこのチャンスを逃さず、大きなビジネスに結び付ける想像力を持ちましょう。
農産物や特産品などのブランド価値を上げるためのコンサルをされているのだから、地域ブランド価値は、特定産品に紐付けられてプレミアムな価値を生んでいることもご存知のはずだ。
桃だったら、岡山と福島とか都道府県単位で想起されるだろう。イチゴだったら栃木、福岡などが強い。魅力度ランキングでどこに居ようと店頭で美味しそうなイチゴは、トチオトメとか博多あまおうとかの農産物ブランドで買われていく。
ブランド牛肉だったら、1位松阪牛、2位佐賀牛とか意味がある魅力度ランキングも可能だろう。産地表示と品質規格の混乱はあって但馬牛と神戸牛どっちがブランド価値があるかとか考えさせられる。
ともあれ、ブランド(Brand)は所有する牛に目印の焼印をつけたことに由来といわれる(古代エジプトからなど諸説あり)。その後、製品または会社の戦略的個性とか約束としてマーケティングの重要概念として発達してきました。そんなブランドの総合研究所を名乗る会社が行った魅力度アンケートでで都道府県の魅力度ランキングを最下位までつけて毎年発表してニュースにまでなることは重大である。なぜ県知事から抗議を受けたのか、今一度考えて欲しい。
調査でそうなったから正しいと信じてしまうのは、調査出身だからかもしれないがブランド総合研究所と屋号をつけてランキング発表とコンサルビジネスを行うた自社のブランド価値がどこにあるのか自省していただきたい。