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デジタルトランスフォーメーション(DX)は第二の鉄砲伝来である

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菅内閣の目玉政策にもなっているDX(デジタルトランスフォーメーション)。そのDXの本質はズバリ「第二の鉄砲伝来」です。

DX 騎馬 鉄砲隊.png

鉄砲伝来以前の最強の武器は、騎馬武者でした。乗馬して、矢を射るという技の習得は容易ではなく、幼少期から馬と弓矢に親しみ鍛錬を積める武家のエリートならではの技術であり、飼い葉などの負担を維持できる父祖伝来の技でした。イラストは那須与一のものですが鍛錬した武家こそが戦力となり、その維持に飼い葉や鎧などを運ぶ従者も従える財力も持っていました。

鉄砲伝来で変わった戦闘の常識

騎馬が最強だった常識は、鉄砲伝来で塗り替えられました。高価な鉄砲も量産され合戦の主力武器へと変わっていきます。大雑把にいうと

  • 鉄砲や弾薬を大量に購買できる財力と堺の商人らとのつながりが最も重要になる
  • 部隊編成も、鉄砲を活かす、足軽中心へと変化
  • エリート教育を受けた武家は戦力から外れる

といった変化が起きました。鉄砲がなくても足軽中心の部隊への変化があったとかいろいろ論じられていますが、弓矢を射るには熟練の武家が必要で、ちょっと槍をちょっと使える足軽だけでは足りないところを、農民兵も使える鉄砲が大きく変えたのは確かなようです。

鉄砲のように、コンピューターとソフトウェア(デジタル)がビジネスの競争のルールを変えている

デジタルへの変化たるデジタルトランスフォーメーションは、鉄砲伝来に似ています。従来、武家のように優秀な総合職社員を集めていれば、配置転換や転勤で外部環境の変化に対応して戦えていた会社を、デジタルを有効に活用する新興企業が破る事態が起きています。
この図は、DXの本質を3時間の講義やそのまとめのブログ記事で紹介れているところてんさんが紹介されたDXを象徴する対比です。

計算資源をスケールできる今のクラウドとソフトウェアを駆使するInstagramの13人の社員が、3000万人の顧客を持てるということを表しています。ところてんさんが引用された元の芝尾幸一郎さんのスライドでDXとは戦い方の変化で、真髄は、CPU,自動機械に戦わせることという説明とともにこの少数が大勢の顧客を無数のCPUを使って獲得・維持することが示されています。

従来の常識では考えられなかったことが、加速度的に進化を続ける、コンピューターとソフトウェアというデジタルによって可能になり、組織の戦い方が変化(トランスフォーメーション)を迫られているわけです。(シリコンバレーのような組織とは で私はダブルループ学習を最初に取り入れた米軍だと考えています。本件は別途ブログにするつもりです)

鉄砲に適した組織に生まれ変わることがDX

鉄砲並みの新しい武器が登場しても、従来の武器で戦い続けるという選択肢はもちろんあります。しかし、加速度的に敵が強くなりつつあるなか、父祖伝来の武器で戦うという決断は、戦いの場を棲み分けるなり、攻め込まれないニッチを見つけるなり、の何らかの工夫というか戦略がないと継続は難しいでしょう。利益がある美味しい場所は新しい武器で攻め込まれると考えるのが合理的だからです。

鉄砲=デジタル という新しい武器に適した組織に生まれ変わり使いこなすのがDXの本質です。

旅行業を例にとると、ネットで飛行機やホテルを予約するということから、空いている部屋をスマホで貸し出させるとか、旅行体験をデジタルで変えていくとか、どんどんデジタルを取り入れた革命が進んでいます。

こういう変革は幅広い業種で起きる、パラダイムの変化であり、デバイスを製造する企業はそれがスマホやコンピューターで置き換えられることを前提に経営をする必要があるでしょう。たとえば、楽器メーカーがクラウドやスマホを使ったビジネスに乗り出すのは、デジタルに食われる市場を取るために必要な戦略でしょう。

コンピューターによる社会の変化は戦後間もなく民間でも始まっていて、オンラインでの座席予約とか家電にマイコンを組み込むとかいろいろなことが昭和の間に始まっていました。その後、メインフレームからオープンとか、クラサバとか、マルチメディアにクラウドとか言葉が変わっただけに見えるかもしれませんが、鉄砲は初期の火縄銃から自動小銃ぐらいの進化を遂げ、付随するエコシステムも整ってきています。俗に「ゆでガエル」といいますが、昔ながらのビジネスを続けられる湯船のお湯はどんど冷めてきて、風邪を引きそうな状態に日本の企業の多くが直面しているのではないでしょうか?昔のやり方で続けられた状態がいつまでも続くとは限らない、そう考えてデジタルトランスフォーメーションに進むべき時は今でしょう。

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