2006年を振り返る#01:Office アプリのWeb化、無料化、低価格化という流れ
CNET Japan読者ブログが2010年5月末ごろに一旦廃止となり、新しく作り直されます。少なくとも2006年は一所懸命に書き、賞もいただいた場なので非常に残念ですが、率直に言ってリニューアルで魅力が落ち、あまり貢献できずにいました。実名ブログとして再出発とのことなので匿名ブログは「無かったこと」として残らないようですが、私としては残したいエントリーがあります。
ただ、複製を作るだけでは面白くないので、2010年視点で2006年に考えたことの意図とその後をいくつか語ろうかと思います。まずは、OfficeアプリのWeb化の流れが目立った、ことについてのエントリー、「Google Spreadsheetsはサッカーママに本当に最適(かもしれない)」についてです。
当時、GoogleがMicrosoftの牙城に迫ろうとしているみたいな、記事があちこちで見られたと記憶しています。戦略的に「金のなる木」たるMicrosoft Officeを無力化していくことは戦略として当然とられそうなこととして予測され、期待されていました。その一方で、そんなWebアプリ化なんてたいしたことじゃないし、脅威ではないという否定する情報がMicrosoftから流されていました。だって、不自由だし、こんなのに満足するのは「サッカーママ」ぐらいだろうという意見です。
しかし、私は、Webアプリであっても使いやすいアプリケーションを作ることは可能に、いつかなるだろうし、Webアプリゆえの魅力や可能性を感じていました。WebアプリゆえにバックエンドのDB連携やカレンダー連携などやりやすそうだという期待を持っていたのです。
実は、ちょうどその当時のMicrosoft Officeは、正式名称が、the 2003 Microsoft Office system と、「システム」に進化したいというあすなろ精神が名前に表れたバージョンで、それにもかかわらずなかなかシステムの一部として使われるというよりは、ワープロ・表計算・プレゼンテーションセット という使われ方でした。
実際のところ、Google SpreadsheetはExcelの代わりにバリバリ使うにはまどろっこしい比べにくいものだったのですが、データをネットワーク上において連携、データ共有とかしていくにはより理想に近いという認識を持ち、焦っていたのではないかと思います。そして、ともかく、マイクロソフトは2010年、「システム」というなんだか難しそうな名前を捨て、Microsoft Office 2010 という世間で定着した名称に戻すとともに値下げして、Web版も提供してきました。Web版では有償の他に無償のWindows Live版もあり、いよいよ、WebアプリでOfficeを使おうという層が無視できなくなったということだと思います。
「金のなる木」たるOfficeで無償のWeb版を出すのは、大きな痛手でしょうが、ここの「市場」を失ってしまうと例えば学生やライトユーザーなどで自社のOfficeへの囲い込みの輪が崩れてしまう。そんな危機感がいよいよ現実化してきているのではないかと思います。
さて最後に、サッカーママたる女房が数年後にWebアプリ版表計算を使うと予想したのですが、今のところはそうなっていません。息子が卒業したサッカーチームの予定表はExcelデータ(2000/2003形式XLSファイル)でサーバーにアップされるようになっており、データ共有のやり方としてはまだこっちの方が分かりやすいようです。更に5年、10年経ったらどう変わっているのか、それとも変わっていないのか?
少なくとも確信を持っているのは、.xlsx とかのExcel 2007やそれ以降の形式になっていることはなさそうだということです。便利だし、データ変換アドインもあるとは言っても、膨大に蓄積されたExcel 2000/2003形式のデータはそうやすやすと代替わりることは無いと予想します。
Google Spreadsheetsはサッカーママに本当に最適(かもしれない)
公開日時:2006/06/28 22:03
Google Spreadsheetsは「プアマンズExcel」という記事。原題「Google Spreadsheets: The Soccer Mom's Excel」となっており、もっと皮肉というかウィットというか、時々表計算ソフトを使うサッカーママ(北米では習い事に熱心で職を持たない主婦層を指す ようだ)向けだという、私には挑発的に聞こえる見出しであった。なんか、息子のサッカー練習の世話をしたり一緒にリフティング練習したりしている我が女房 が馬鹿にされた気がして少し腹が立ったのだが、冷静に考え直してみると、数年後に本当にサッカーママ達がGoogle Spreadsheetsをこぞって使っている様子を私は見るかもしれないという気がしてきた。
Google Office が Microsoft に勝てる理由 という記事を中島聡氏が書かれているように、Google SpreadsheetsはGoogle Calendarをはじめさまざまなサービスと連携した情報の処理窓口に発展する可能性を秘めているのだ。Google Calendarに予約したサッカー練習場の日時とコーチと監督の予定、対外試合の日程とかがから集められたデータを予定表案として自動出力。ちょっとし た矛盾を修正したら、チームの練習予定が組めるかもしれない。これを、Microsoft Excelでやろうとすると、添付ファイルが飛び交い、バージョンがぐちゃぐちゃになって収集がつかなくなるだろう。
こういうある種の情報システムは大企業においては専用のアプリケーションを組まれることも多いのだが、プロジェクトごとに人を集めて社内外の人が協 力して仕事することが増えた今、やむを得ずメールの添付ファイルで仕事している人がかなり多く居るのだ。一方、Google Spreadsheetsは、Webをインタフェースとしサーバー上にマスターデータが置かれるということを出発点にした。ゆえに、デスクトップアプリの 制約の壁を越えて、発展する可能性を秘めている。確かに機能は劣るかもしれないが、それは実は本質的な問題ではなく、また、数年に一回のバージョンアップ サイクルとかいう縛りがないWebアプリケーションなだけに急速に変貌していく可能性を秘めてもいる。
ともあれ、数年後に女房がGoogle Spreadsheetsを使っているのか、いないのか、予想もつかなかったような画期的なサービスが加わっているのか楽しみだ。
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