オルタナティブ・ブログ > データイズム >

記録するジャーナリズムから、測って確かめるデータイズムへ

日本文化の危機、Judoになれるか?日本のemoji

»

日本のemojiが世界に広がりつつあるそうです。小形さんによると、emoji という言葉がヨーロッパやアラビア語などでも話題になって使いたいと話題なようです。

絵文字が開いてしまった「パンドラの箱」第5回--絵文字と日本マンガの親密な関係:コラム - page8 - CNET Japan

しかし、話はすんなりいかないかもしれません、日本のマンガ文化の影響が大きいこのケータイ生まれのemojiたちのコード標準化に、アイルランド、ドイツからの修正案が出ているというのです。師茂樹さん(花園大学准教授)のブログによると、http://d.hatena.ne.jp/moroshigeki/20090426/p1

Emojiに対するアイルランド、ドイツからの修正案 - もろ式: 読書日記 via kwout

豚を表すアイコンとしてマンガはふさわしくないということで提案が出ているというのです。日本のマンガ的なものがアメリカンコミック風味に無国籍化されているわけですが、ベルギー・ドイツ提案では、擬人化された豚が、豚そのものに変化しています。
マンガ/コミック文化の表現というコンテキストが抜かれているわけです。実に、(トン)でもないことです。

かつてUnicodeで「漢字が危ない」キャンペーンをやった方がいらっしゃって、AERAの記事になったのだけど、森鷗外 が鴎外と朝日文字系のカモメになっていてつい笑ってしまったなんていうことがありました。それは、日本の漢字と中国の漢字とのコードが同一に成ってしまうことへの危惧でしたが、それ以上に、文化的な危機にあるのだと知りました。マンガの殿堂とかが話題ですが、そういうことよりも日本のケータイが拾って、GoogleとAppleが世界規格にしようとしているemoji文化をゆがめずに伝えられるかどうかは実に重要な課題でしょう。

また、意味が間違って通じる危険性もあります。直井靖さんのブログにおける「ケータイ絵文字の涙と汗」というエントリーで指摘のように、元々、涙、居眠り鼻ちょうちん、冷や汗 という表現の意図が消えた提案になっています。

http://d.hatena.ne.jp/NAOI/20090528/1243505334

ケータイ絵文字の涙と汗 - Mac OS Xの文字コード問題に関するメモ via kwout

Yahoomessenger_2小形さんは日本のマンガ由来のと考察されていますが、スマイリー(図はYahoo.com のメッセンジャーで使えるスマイリー) から広がったEmoticon 文化は、西洋式と東洋式とがいい具合に融合して
http://en.wikipedia.org/wiki/Emoticon#Western_use_of_East_Asian_style
とかの広がりを見せている広いものだと思います。

マンガの文化や絵文字でコミュニケーションする文化が無い人々には理解しがたいことでしょうが、そこにこめられたコンテキストをうまく生かした規格化が重要だと注目しています。

日本の柔道が、Judoとなって、別のスポーツになっているという批判はありますが、まだ本質は失っていないと思います。絵文字がうまくemojiとして広がれるか?そして何より誤解されずに伝わる基盤として広まれるかで今が重要な時のようです。

是非多くの方が関心を持っていただければ幸いです。

8/18追記:夏目房之介さんのエントリー 小形克宏「絵文字と日本マンガの親密な関係」でも同じ話題。小形さん、そういう方とは存じませんでした。どうりで、マンガ論が深い。ちなみに私は、文字コード関係は1993年から1999年ごろまで首を突っ込んでいて以前は漢字情報処理研究会会員だったりします。リンクした師さんと始めてお会いしたのは多分1998年ごろのはず。

>>>>>> ポツポツとTwitter 始めました。お気軽にフォローください。
http://twitter.com/sakamotoh

お断り:
本ブログでの坂本英樹による投稿やコメントは、あくまで個人の主観に基づくものです。現在および過去の勤務先の意見や見解を表すものではありません。

Comment(0)