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バナーをクリックしない68%のユーザーにリーチする秘策 【後編】

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Fiskateers中編より続く)

Fisk-a-teersは,400年の歴史を持つ老舗刃物メーカーFiskarsが主催する クラフト用品ファン向けオンライン・コミュニティである。トップページの手作り感あふれるデザインが印象的だ。

そこでまず目立つのが5人のメイン・パーソナリティ (Lead Fiskateers) だ 。彼女たちは決して美人というわけではない。親しみやすい友達のような,しかし熱狂的なクラフトマニアで,このコミュニティのスター的存在である。

これは Docomo の新しい製品ラインナップにおけるペルソナ活用(Style, Prime, Smart, Pro)にも通じるもので,ユーザー調査からマニアを典型的な5パターンに分類し,キャラクタ作りをほどこした,ペルソナ・インサイト分析に基づく配置だろう。

彼女たちは,選抜され,顧客とのコミュニケーション教育を受けたのち,このコミュニティのメイン・パーソナリティとして活躍する。ユーザーは自分が共感するいずれかの部屋に入り,彼女たちに導かれるように,自然にコミュニティに溶け込んでいく。この感覚はぜひ実際のサイトで体験してほしい。

Fisk-a-teers

訪問者がキャラクタに共感し,コミュニティに惹かれ,スクラップ・ブッキングやパッチワークにさらなる興味を持ち,同好の友人を増やしてゆく。サイトのいたるところに,そのための心配り(ホスピタリティ)が感じられる。

クラフトマニアのインサイト(潜在的欲求)は,趣味を通じて新しい自分の可能性に出会うこと。具体的なアクションとしては,同好の友人たちと知り合い,語り合うこと。そして自らの作品を見てもらう機会をとても欲しがっていることだ。このサイトはそのインサイトを刺激するコンテンツにあふれている。ギャラリーにある作品は趣味のレベルのものが多く,安心してアップロードできる。投稿もコメントも交流も,とてもフランクだ。そのような雰囲気を5人のメイン・パーソナリティが演出しているのだ。

動画も多くアップされている。動画の一番の強みは感情に訴える力だ。これを見れば,いかにメイン・パーソナリティである "Lead Fiskateers" とファンの間に,心の通じたコミュニケーションがされているかを体感してもらえると思う。(英語を理解できなくても問題ありません。最後まで目を通してもらえば,Lead Fiskateers とファンの心の交流がきっと伝わってきます)


YouTube: Fiskateer Leads Say Thank You

Lead Fiskateers は Fiskarsの代表である。ロイヤルカスタマーにとって,彼女たちとの交流は Fiakars との信頼の絆を象徴するものだ。すぱらしいブランド・エンゲージメントである。

そしてもうひとつ。この動画はイベント会場のものだが,ここにまた成功のヒントがある。ネットとリアルとの融合が強く意識されていることだ。5人のメイン・パーソナリティはネット上だけの存在ではない。それどころか頻繁にファンとリアル交流しているのだ。それもクラフト用品を販売している専門ショップを舞台として,連日このようなイベントが行われているところが心憎い。

Fiskateers Calender of Events

-- 余談だが,活性化しているコミュニティには必ずその理由,成功のエッセンスがある。
-- 逆にそれがないコミュニティはほぼ失敗する。
-- それほどコミュニティは一筋縄ではいかないものなのだ。

かようにして,このコミュニティは当初予想を大きく上回る会員を集め(2008年中旬時点で会員数4000人強。一見少なく感じるが,ロイヤルカスタマーと考えると強力な数字である),1年間でFiskars社のクラフト部門の売上を3倍強,オンライン・コマースでの直販売上を6倍に引き上げた。典型的なプライベート・コミュニティの成功事例である。




この3回の連載では,あえてマスメディアから遠い,地味な製品を扱う製造業の事例を取り上げた。ソーシャルウェブ活用のチャンスは,どんな企業にもあるというメッセージのつもりだ。

私自身,ループスの経営を通じて,ビジネスとして成功するコミュニティ構築の難しさを肌身にしみて感じてきた。そしてこの一年,ビジネスモデルやマーケティングの観点から,徹底的に国内外事例を調査し,成功と失敗のエッセンスを探り続けた。

生活者主導の時代。いかに企業がお客様と信頼の絆を結び,それを継続・進化させていくか。
私の得たものをお伝えし,すこしでも読者の皆様のビジネスに貢献したい。
そして,機会があればループスが貴社のビジネスをお手伝いし,共に成長し,成功したい。
それが私自身の,このブログのインサイトである。

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