スタートアップにはソーシャルメディアの専門家が必要か?
ネット上で様々な新しい事業が始まっている今、自分も何か新しいことをやってみたいと思う方も多いだろう。thenextweb.comに企業に関する面白い記事が載せられていた。スタートアップにはソーシャルメディアの専門家が必要かと題する記事だ。述べられている原則は非常にシンプルだが、大事なことばかりだ。
顧客一人一人の満足を追求すべきこと、表面的な数字にとらわれずに実質的な利益に注目すること、信頼関係を何よりも大事にすることなど、当たり前だが忘れられがちなことだ。
時折、こういった記事をじっくり読んでみると、どんなビジネスにとっても参考になるに違いない。ソーシャルメディアの活用のみならず、事業を展開する際に大切な事を論じていて参考になるので、以下に大事なポイントだけ抜き出して紹介する。
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ソーシャルネットワークは、企業と人々の関わり方を全く変えてしまった。今や大衆は、メディアにとって単なる顧客ではなく、自分たちをプロデュースする存在である。もちろんこんな議論は、始めて耳にすることではなく、すでに頭に入っているだろうが、忘れてしまっていたり、それほど気に留めなかったりする方も多いのではないだろうか。
ここで論じるのは、なぜスタートアップがソーシャルメディアを利用すべきなのかという問題ではない。むしろ、ソーシャルメディアの専門家を雇うかどうかを考慮する前に、ソーシャルメディアを用いる明確な目的やアジェンダを定めておく重要性について考えてみたい。
まず何よりも、製品の質が最優先であることを忘れてはいけない。きらびやかなキャッチフレーズと華やかな広告で、質の低い製品をごまかして売り出しても、短期的な結果を得られるに過ぎない。
最近、Peter Shankman(上画像)が「私が‘ソーシャルメディア専門家’を雇わないのは何故か」と題する非常に興味深い記事を書いており、次の文章は大事な点を突いている。“いつの時代でも利益を生み出すのは、しっかりしたマーケティングと一流のサービスだ”
明確なアジェンダと目的が不可欠
最初に、アジェンダと目的という二つの語をどんな意味で用いるかをはっきりさせよう。アジェンダという語は「自分が作り出そうとしている最終的な結果」を指して用いる。さらに目的という語は「自社のサービスや製品を通してカスタマーに何を体験して欲しいのか」を指す。
Shankmanの意見では、スタートアップがソーシャルメディアを用いるなら、アジェンダは一つだけにし、このアジェンダを固守すべきである。そのアジェンダとはただ一つ「利益を上げること」である。
Twitterのフォロワー、Facebookの“いいね!”が増えれば確かに嬉しいが、最終的に利益を生み出さなければ何の意味もない。ユーザーとのエンゲージやコネクションは、あくまで途中経過に過ぎないことを忘れてはいけない。
目的について言えば「全てはカスタマーを満足させること」に尽きる。カスタマーと関係性を作るための努力は全て、製品を使ってみようという気にさせること、そして自社のブランド名を最初に思い浮かべてもらうためのものだ。
もしソーシャルメディアの専門家にアウトソースすることにしたら、(他社ではなく)自社のアジェンダと目的に全く一致した目標を持ってもらうことは何よりも重要である。
自社のソーシャルメディアにおけるプレゼンスを量る(フォロワー、「いいね!」、コメント、Kloutスコアなどの)KPIsを設定することもできるが、コンバージョンに結びつかない数字はかなり割り引いて評価すべきことも忘れてはいけない。
カスタマーとのリレーションシップを確立するのはだれか?
最終的な目標を考慮したとき、どんなソーシャルメディアを使うにしても覚えておくべきなのは、カスタマーとのリレーション(関係性)をつくり上げることだ。どうすれば製品を改善できるか、どうすればもっと良いサービスが出来るかを把握しておくべきであり、決してカスタマーを騙してはいけない。
ファンやフォロワーの数は簡単に増えたり減ったりするので、数の増減に過度にとらわれるよりも、一人一人を会社にとっての資産とみなす方が大切だ。数の増減のみに捕らわれていると、利益を上げ、カスタマーを満足させるという本来のアジェンダと目的を見失ってしまう。Shankmanは次のように述べている:
“カスタマーはあっという間にぞろぞろと逃げ出していく、彼らはそうできるからだ。過去においてどれほど忠節だったとしても、カスタマーはどこにでも行きたいところに行ってしまう。カスタマーに対して嘘をつけば、捕まり、別れを告げられる”
つまり、カスタマーを大事にすることは、彼らを取り戻すよりずっと簡単なのだ。ただし、他の様々な関係を築くのと同じように、カスタマーとの関係を築くには時間がかかる。様々な質問に答え、情報に富んだブログを開設し、こちらからも質問を投げかけることは、信頼を得るのに欠かせない。
現在のストラテジーは成果を挙げているだろうか?
アインシュタインは“愚かさ”を定義して、“同じことを何度も繰り返しながら、異なる結果を期待することだ”と述べた。ソーシャルメディア・ストラテジーについても同じことが言える。うまくいかない点があれば、その方法はやめて、新たな方法を試みるべきだろう。
例えば、ファンやフォロワーの数が増えているのに思ったような結果が出ていない場合、あちこちで紹介されている一般的なソーシャルメディア・ストラテジーにこだわらずに、別の方法を試してみるべきだ。
では、何らかのアクションを自動的に処理する事は可能だろうか。間違いなく可能だ。だがその際にも、カスタマーにとってはブランドの存在が現実の存在であり、ブランドは実在の人々とエンゲージしているということを忘れてはいけない。
ソーシャルメディア専門家を雇うだけの価値があるか
スタートアップが“ソーシャルメディアの専門家”を雇うべきかどうかは、そのスタートアップがどれほどしっかりしたプランを持っているかによる。もし、取りあえず勉強してみようというレベルで起業したのであれば、それほどうまく行くことは期待できないだろう。
Bufferを起こしたLeo Widrichは、彼のパートナーであるJoel Gascoigneが教えてくれたことを次のように記している。“問題を無視したり、誰か一人に任せっきりにしたりしてはいけない。チームのみんながユーザーと接点を持ち続け、自社の製品をどう見ているか、どのように前進しようとしているかを共有しているべきだ”。
ソーシャルメディアにおけるエンゲージメントには、多くの時間が必要だ。多くの人の注目を集めたいと思うなら特にそうだ。そのように多くの時間を費やすことは、ソーシャルメディアを活用するのに、必要不可欠なプロセスの一部だ。もし、製品の開発に忙しすぎると思うなら、まずはそれを優先し、ソーシャルメディアの活用は後にした方が良いだろう。
もしあなたが始めようとしている事業に、はっきりした役割、実行に移すための明確な計画、予算といった面で、明確なビジョンが無いのであれば、ソーシャルメディアの専門家を雇う必要はない。
まとめると、ソーシャルメディアの専門家を雇うこと自体は悪い考えではないが、多くの起業家にとっては、ソーシャルメディアの専門家を雇うことを含め、マーケティングにお金を掛けるよりも、完璧な製品を作り上げ、ユーザーに最高の使い勝手を経験してもらうために予算を注ぎ込む方が賢明だということだ。