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プロダクトマネジメントとイノベーション

ベンチャー育成議論の落とし穴

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日本のベンチャー起業率がめちゃくちゃ低いのはなぜか?・・・という議論が延々となされている。もう10年や20年は続いているのではないだろうか。大変勝手ながら、右図からリンクさせていただいたダイヤモンド・オンラインの「日本は先進国の中で最低水準!ベンチャー(起業活動)を活性化するためには」は代表的な論調だと思う。

従来の議論でも、日本人には起業家が少ない、VC投資が低い、課税率が高い、規制が多いなどなど、さまざまな「障害」が指摘されてきた。

しかし、僭越ながら、最も重要な事が抜けているように感じている。それは、ベンチャーのための市場を誰が作っているのか?という事ではないだろうか。市場が大きく、そこに参入余地が大いにあるのであれば、誰だって起業するのである。VCだって投資するし、そこには、経営から技術、人事に至るまでの様々な専門家が集まるはずである。

「市場」といってもリスクの大きいR&D市場から成熟市場の隙間産業に至るまでいろいろあるので、例として国がリスクを取るべきステージのハイリスクR&Dベンチャーを考えたい。

起業率の高い米国では、国防予算が市場を作ることが多い。国防予算50兆円のうち、R&D予算は7兆円近くもある。それをNSFDARPAのような研究マネジメント会社が受け取り、さまざまなR&Dベンチャーや大学に撒く。NSFは7,000億円、DARPAは3,000億円である(国防以外からも調達あり)。これらを資金として、ベンチャー企業や大学はビジネスインテリジェンスやロボット、セキュリティなどの研究を行い、事業化を実現する。GoogleでさえもNSFの助成によってその技術を得た。さらに、国防予算だけではないが、他の予算をマネジメントするNIHなど3兆円ものカネを撒く。

数千億円という単位は、当該市場の獲得を目指して事業会社が乱立する閾値である。7兆円もあれば、年間に数百社が起業してもおかしくない。

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対する日本の防衛予算は米国の10分の一の5兆円弱で、うちR&Dはわずか数百億円にすぎない(防衛予算は右図からのリンク)。これでは誰もハイリスクR&Dベンチャーを起業するはずがない。世界中の天才たちも興味を抱かないだろう。

ただし、日本には防衛予算を拡大したり、それをそのまま市場に投入することが出来ない事情がある。

そうであれば、その代わりになるような数千億円規模の投資が国家によって必要だ。民間企業はそのようなハイリスクR&D市場に投資しにくいので、全国民でリスクを共有するのが望ましい。

いまは省庁縦割りで数十億円~数百億円のイノベーション、産学連携予算などが組まれているが、医療や災害対策などの重点分野を決めて、それぞれ数千億円規模になるぐらいの投資をして欲しい。そのような投資をして初めて、「起業家とはなんぞや」という議論が出来るのだろう。

今後のベンチャー育成議論においては、どのようなステージのベンチャーにどのような市場を喰わせるのか、そこを明確にした激論を期待したい。

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