クラウドソーシングのビジネスモデル 2.0
日本ではクラウドソーシング(Crowd Sourcing)が活況のようだが、海外では多少動きが出ている。
といっても既に半年近くなるが、クラウドソーシング大手のoDeskとElanceが経営統合した。また、Freelancerは中小のクラウドソーシング・サイトを統合したり、コンテンツ販売サイトを買収したりと、経営基盤の安定化に進んでいる。
いずれのサイトも10年以上の歴史があり、累積の取引トランザクションは1,000億円を超える。成長しているように見えるのだが、上記はやや心配な動きでもある。
私は過去にこれらのサイトを積極的に使わせていただき、世界中の優秀なエンジニアに大いに仕事を手伝ってもらったことがある。そのおかげで、インドや中国はもちろん、ウクライナ、モルドバなどのIT新興国に尋常ではないレベルの天才エンジニアがいることを知った。数100ドルもあれば、彼らは夜を徹してすさまじい量と質のプログラムを開発してくれる。
そのような素晴らしい「出会い」を提供してくれたビジネスではあるが、そのビジネスモデルにはスケールしにくい「欠点」があるのではないかと思う。
それは「マッチングを縛れない」ことである。質が良いクラウドソーシング・サイトが増えれば増えるほど、発注者も受注者も複数サイトに登録する。また、物価が安い地域ほどクラウドソーシング・サイトの手数料の比率が大きくなって手取りが減るため、手数料を避けようとする。したがって、取引の成立は複数サイトで取り合いとなり、また、せっかく良い「出会い」があっても、2度目以降は発注者と受注者が当該サイトを介さずに直接取引して手数料の控除を避けてしまうのである。
要するに、固定客、リピーターを増やせず、ストックが積まれないのである。それが冒頭の動きにつながっているのではないかと思う。
これを解決するのは出会いの幅広さではなく、取引のユニークさでユーザを縛るしかない。それは、支払の確実性を増す仕組み、納品の確からしさを保証する仕組みなどだが、いまのところ、どのサイトも決定打に欠ける。なせならば、発注者と受注者の間で質の良い取引が成立して信頼感が生まれると、逆に直接取引を生んでしまうというジレンマがあるためだ。良いユーザはビジネスを縮退させてしまうのである。
これでは、クラウドソーシング・サイトはビジネスモデルの無い単なるSNSになってしまう。
クラウドソーシングは早くも次世代のビジネスモデルを必要としていると思う。