インテリジェンス再考
昨今、ビッグデータという新語とともに再度(?)ビジネスインテリジェンス(BI)が着目されていますが、いったい何のためにその技術があるのか、何のためにインテリジェンスを要するのかといった背景がやや迫力を欠いているように思えます。これはIT業界にいる我々の責任でもあります。
元々、戦時の諜報活動で得られる知見を意味していただけに、米国CIAによる「インテリジェンス」の定義は今でも「自国の安全を守るために国のリーダーが知るべき情報」と実に簡潔に明記されています。これを企業に置き換えれば、「自社が安全であるために経営陣が知るべき情報」となるでしょう。すなわち、競争相手に勝ち続けることで自社の地位を保つための情報とも言えますね。
その観点から見ると、よくBIの目的として言われる売上分析、コスト監視、予算策定、物流最適化といった社内の経営管理業務は、確かにインテリジェンスを要する場面ではありながら、もう一つ迫力を欠くのは、それが敵に勝つ方法なのか?と問われるとピンと来ないからでしょう。
簡単な例を挙げると、たとえば、PEW INTERNET社の調査によれば、インターネットユーザの61%、モバイルユーザの35%もの人がオンラインバンキングを用いているそうです。もはや、銀行員が寝ている間に決済取引が行われたり、あるいは新規口座が開設されたりする時代になったわけですね。このような時代には売上分析だけをしていても先手を打つ戦略は出てこず、常に競争相手位の後追いになる可能性があります。顧客はネット上でどのように振る舞い、何を感じて競合に逃げてゆくのか、そして、競合企業はどのように顧客を誘導しているのかということを24時間×365日に渡って監視し、分析し続けなければならないでしょう。また、そのためには、リアル店舗はもちろん、ネット上、コールセンターなどあらゆる顧客接点にセンサー(諜報拠点)を置かねばなりません。
これは一つの単純な例ですが、再度原点に立ち返って、「競争相手に勝ち続け、自社の地位を守る」にはどうすれば良いかということを常にインテリジェンスの目的に据えることで、より迫力のある提案ができるのではないかと思った次第です。