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プロダクトマネジメントとイノベーション

AmazonがKindleで破壊する自身のビジネスモデル

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Newsweekkindle_2 Amazonが昨年から電子書籍リーダーのKindleを売っています。 電子書籍リーダーという分野は以前から各社が参入しているものの、あまりパッとした売れ行きを示さずに終わっていました。それだけに、私は天才Jeff Bezosが何を考えてKindleを売っているのか、ずっと考えていました。

その前に、まったくの素人の推測ですが、書籍産業というのはライセンスビジネスの元祖なのではないでしょうか。この産業はコンテンツを複製する権利、すなわち、コピーライトという大発明を成し遂げましたが、それは500年後にIT業界にも適用され、ソフトウェア産業を大成長させました。

以前、米国のコンサルタント会社がこのようなことを言っていました。

Snowhitea1937Snowwhitedvdディズニーの白雪姫はいつの時代にも子供たちに人気である。このアニメは1930年代に作られたが、それ以後、コンテンツを伝える手段が映画、テレビ、CD、DVD、インターネット、オンデマンドビデオと様々に変化しても、相変わらず、いつも白雪姫は人気である。白雪姫という優秀なコンテンツがテレビやパソコンの需要を作っているのだ。

うむ、その通りでしょう。優秀なコンテンツはライセンスビジネスを発展させるわけです。

そこで最初に戻って、いったいJeff Bezosは何を考えているか・・。

少し前にTim O'ReillyがJeffのインタビュー内容をブログにしており、そこにヒントが隠れているのではないかと思いました(個人的に)。Timも同じ活字産業にいてIT業界にも片足を突っ込んでいるわけですから、おそらく、Jeffの大ファンなのでしょう。「俺には分かるよ、Jeff」と言ってるような気がします。

インタビュー内でJeff曰く、「あらゆる出版物を60秒以内に届けたい」と。今でもAmazonはその即配ぶりで人気ですが、彼はそのスピードをさらに何百倍も早め、60秒後に読者の手元に届けたいと言っています。これはかつての書籍の購買行動をかなり変えます。本屋でじっくりと本を選ぶのではなく、まるで音楽をダウンロードするように手軽に書籍を選ぶわけです。

著者はこの購買行動に合わせるように、ダウンロードしたい短編を増やしたり、有償のコメントやブログなどを配信するようになるでしょう。あるいは、リアルな図書館で調べ物をしてコピーする代わりに、Amazonで検索して当該箇所だけ部分的にダウンロードするといった「Amazon図書館」のような使い方をする人もいるでしょう。月間固定料金などの体系もできるでしょう。

このビジネスモデルは現在のAmazonの「出版された本を商流にのっとって一冊単位で販売する」モデルを破壊し、必要なコンテンツだけを必要な時にダイレクトに配信する「中抜き」モデルにしてしまう可能性があります。必要なのはコンテンツであり、それを届ける方法はどうでもよい。Jeffはそのように考え、Kindleを電子書籍リーダーというより、Amazonというコンテンツ配信会社の受信機にするつもりなのでしょう。活字産業におけるAppleという感じです。

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