コマーシャルオープンソースへの道(1)
連載になるかどうか不安ですが、年もあらたまったことでもありますし、IT業界の潮流がどこに向かうかをテーマを絞って考えてみたいと思います。テーマは私の最大の興味であるソフトウェア市場としましょう。
さて、ちょうど1年前、米国SDforum社が「The Future of Open Source」なる会議をシリコンバレーで開催し、SugarCRM、OpenLogic、JasperSoft、MySQLなどのコマーシャルオープンソースベンダをスピーカーに迎え、エグゼクティブたちに対し、新たなる潮流が起こりつつあることを解説しました。その1ヵ月後にはサンフランシスコでOpen Source Business Conferenceが開催され、米国のソフトウェア産業、すなわち、ソフトウェアのライセンスビジネスがまったく異なるビジネスモデルにシフトしつつあることを宣言しました。
ちなみに、日本でも早くも来月、コマーシャルオープンソースベンダを集めた同種のセミナーを開催します。
この潮流の発端になっているのはエンドユーザの強いニーズです。例えば、CRMを導入している企業は米国では25%、日本では10%に過ぎません。ERPを導入している企業も日本では3割程度です。数だけみれば、日本の160万社と言われる法人の大半は業務アプリを使っていません。中小企業に限れば、業務アプリを使っている企業を探す方が困難なほどです。
一方、ソフトウェア産業の覇者に成長したSAP、Oracle、Siebel(現Oracle)などは、初期ユーザに対して提供してきたライセンスモデルを変更することができず、これら未導入の企業群に対して合理的な価格を提示できません。また、無理をする理由もありません。
ITのコモディティ化とインターネットのブロードバンド化が同時に進んだことによって、未導入の企業群に対し、まったく予期せぬベンダ群があらたなソリューションを提供し始めました。それがASPやオープンソースの商用版、スタックと呼ばれるものです。
次回はこれらがSaaS、SOA、マッシュアップなどに変化してゆく様子を見てみましょう。