コマーシャルオープンソースへの道(4)
コマーシャルオープンソースは「開発モデル」か?
今回はこの問いへの答えを考えてみましょう。
コマーシャルオープンソースは多くの場合、商用ソフトウェアベンダがソースコードを公開することを前提とします。この場合の「オープンソース化」はビジネスモデルだ、あるいは、開発モデルだとどちらかに限定する方がおられますが、コマーシャルオープンソースに限れば両方を兼ね備えていると言えます。
もちろん、ベンダはオープンソースコミュニティを率いますから、そこでは24時間×365日の休むことのない開発・改善・イノベーション・サポートが行われ、いわゆる「開発モデル」が実践されます。
ところが、SugarCRMのような新世代のコマーシャルオープンソースベンダは真の狙いを他に持っています。
とある米国のCRMベンダは、売上げの7割を販管費に使っています。顧客から受け取ったライセンス料金のうち、7割は他の顧客への販売活動に使っているわけです。国内でも同じです。右は日本の有名なSFAベンダの直近の四半期のP/Lです。このベンダはサービスも提供しているので、売上総利益がライセンス収益に近くなります。今年(右欄)は実にその約100%を販売管理費に使っています。今期は業績がかなり悪化していますが、好調だった昨年(左欄)でも6割ほどを使っています。
このようなカネの回し方は本当に顧客のためになっているでしょうか。顧客はソフトベンダの営業マン(と間接部門)の給料を支払っているわけです。ただし、その営業マンは他の顧客のために働いているのですが。
「顧客のカネを使って他の顧客を開拓する」という高コストの構造がある限り、ソフトベンダの限界費用は高まり、ライセンス費用も下がりません。顧客は高いライセンスによってソフトウェアの導入意欲を無くします。そして、ベンダはますます営業マンを増やしてカネ払いの良い顧客を開拓します。
SugarCRMなどの新鋭のコマーシャルオープンソースベンダは、まさにこの「インフレスパイラル」を打破するためにオープンソース戦略をとっているわけです。
すなわち、極力、営業マンを増やさず、コミュニティを通じてソフトウェアの評価を共有しながら拡販し、拡張機能をコミュニティと共同開発することでムダなプリセールス活動も低減しています。
これがコマーシャルオープンソースの共同開発モデルです。次回は「運用」すなわち、SaaSや次世代SaaSについて考えてみましょう。