星に願いを(1):製品名に込めた願いとは?
どこのソフトベンダーの製品であれ、オープンソースのプロジェクトであれ、ほとんどのソフトウェアには名前がついています。そしてその名前には作者の思い、考え、用途、機能などが含まれ、一つのアイデンティティを形成しています。
インフォテリアの主力製品「ASTERIA」(アステリア)も同様です。今日は、この「ASTERIA」という名前に込めた私たちの願いとその背景をお話ししましょう。
「ASTERIA」自体をあまりご存知ない方のために少しだけ宣伝をしておくと(笑)、「ASTERIA」は、システムとシステムをつなぐために私たちが国内で独自に開発し、2000年10月に発表したパッケージソフトウェアです。最初のバージョンはXML専用でしたが、2002年から現在のアーキテクチャになり、様々なデータ形式、プロトコル、アプリケーションをつなぐためのパッケージとして、今では270社を超える企業でシステム連携に採用されています。直近の事例としては、NEC社から発表された、産経デジタル社の基幹SOAにおけるESBとしての採用などがあります。
さて、製品名の「ASTERIA」ですが、これは、ギリシャ語で「星座」という意味です。また、ギリシャ神話では星の女神として登場します。
ところで、マーケティング関係の方には改めて話をする必要はありませんが、製品やサービスのネーミングする場合には考慮すべき点がいくつもあります。
- 名前が意味(製品の特長をあらわすなど)を持つこと
- 短いこと(できるだけ5音節以下)
- 登録商標とぶつからないこと
- 50音順でできるだけ上位にあること
- ABC順でできるだけ上位にあること
- 「.com」「.jp」などのドメインが取れること
1は当然のことです。名前を覚えてもその名前から中身や機能を想起できなければ、ネーミングの意義が下がってしまいます。2は、名前を記憶してもらうために大事なことです。逆に6音節以上になる場合は、短縮形を考えておくことです。日本語では6音節以上の名前は短縮されるケースが多いのです。例えは、「スタバ」「マック(マクド)」「パソコン」「プレステ」など。
そして3は、一般に広く提供しようとする場合は必ずクリアしなければなりません。既に取得されている商標を勝手(知らない場合も同様)に使用すると、使用の差し止めだけでなく、損害賠償のリスクもあります。国内のパッケージで登録商標に抵触して商品名を変えざるを得なかった例としてジャストシステムの「三四六」(発売当初は「三四郎」だった)があります。
4と5は結構難しいものです。1とコンフリクトすることもよくあります。ちなみに、4と5双方を満たすベストな名前は「あ」で始まることです。これは50音順でも最初、ABC順でも最初になるからです。この製品は、インフォテリアが創業時から計画していた核となる製品ですから、ネーミングにこだわりました。4,5はMUSTではありませんが、私はどうしても良い名前にしたくて、ネーミングの条件として「A」で始まることとしました。
それでも、いくつも候補が挙がりました。しかし、特に「意味」を重要視して最終的に「ASTERIA」に決定しました。
しかし、実は決定した時点では、6のドメイン名はクリアしていませんでした。しかも、決めた後に商標を登録しようとしたところ、類似商標があるということで却下されました。
そこで、決定後に.comドメインと商標の取得に動きました。まず海外にいる「asteria.com」の所有者と交渉し、ドメインを入手しました。現在では、「ASTERIA」英語版の情報サイトとして使用しています。次に商標ですが、類似商標がある場合は簡単ではありません。そこで、類似商標を所有している会社に「Asteria」を登録してもらい(自社の類似商標は登録できる)、「Asteria」の登録商標を譲渡してもらいました。こうして、上記の1-6すべてをクリアできたわけです。
さて、一番大切な「意味」ですが、先に述べたとおり、「ASTERIA」は「星座」という意味です。星座がこの製品といったいどう関係があるのでしょうか?
「ASTERIA」は、さまざまなシステムをつなぎます。つまり、さまざまなビジネス同士をつなぎます。私たちは世の中に数え切れないほど存在するビジネスを星に例えました。そして、それらの星々を星座のようにつなぐ。これが「ASTERIA」の役割です。世の中の数多くのビジネスの星々をつないで、星座のように新たな形、新たな価値を創り出し、そして星々がもっと輝くようにしたい。それが「ASTERIA(=星座)」という名前にこめた願いなのです。
このようにして、「ASTERIA」という名前は生まれました。その「ASTERIA」も来る10月11日には、いよいよ第4世代を発表します。これから数回にわたって、私たちが星にこめてきた願いを綴っていくつもりです。