情報システムを導入する際に意識すべきこと
うっかりエントリの間隔があいてしまったことをお詫びします。
書くべきネタはあり、書きかけてはいたのだが、結局最後まで書ききることができずに お蔵入りさせてしまった。何事にも、気力・タイミングが重要なのである。(合掌)
さて、気をとりなおして、ここ最近思っていることを気楽に書かせていただく。(気合を入れて書いたためにお蔵入りさせてしまった反省から)
一度にすべての内容を書ききるのではなく、少しづつ、短くてもいいから、書いていく、ということが大事なのではないか、 と思うのだ(すこしいいわけがましいが)。
情報システム導入の際に意識すべきこと
大学でネットワークや情報システムの導入を行う立場にある関係で、ここ数年、多数の情報システムの導入に立ち会ってきた。また、自治体等の情報システムの総合評価委員といった役もこなしてきた。これらの経験から、情報システム導入には、ある種のスキルが必要ではないか、と思うようになりつつある。まあ、当然といえば、当然の話である。
以前、「デプロイメントスキル」というエントリを挙げさせていただいたが、「導入スキル」というものがある、と思うようになりつつある。個人的には、これまでの導入で多くの「失敗」を経験しており、その「失敗」によって学んだ「スキル」、ということにもなろう。
さて、情報システムの導入担当者にとって、機器の構成や性能に関する知識は、最も必要とされるものであり、また、最新の機器情報や、トレンドを知っていなければ、時流にあわせたシステム設計を行うことは困難でもある。そういった意味で、一般的な情報システム導入のためのノウハウ、といった情報は、時がすぎればすぐに陳腐化してしまう。
しかし、情報システムの導入でも、長い間有効なスキルは存在するような気がする。残念ながら、そういったスキルを十分に紹介してくれる教科書や書物に出会ったことがないので、ここで私見を書いてみたいと思う。数年後に見直して恥ずかしいい思いをする可能性は高そうではあるが。
- 情報システムのライフサイクルに注意すること
- 複数の視点からのチェックを忘れないこと
- 使い勝手などの重要な点は細部に宿ることを忘れないこと
- すべての要望を取り入れて複雑化させないこと(アリものを使うべし)
- ドキュメント化すべき点を忘れないこと
うーむ。まだまだありそうだが、今さっと出せるのはこのくらい。出せるときに書いておかないと、昇天エントリになる可能性があるので、途中でも出すこととする。
さて、以下では、上記を簡単に解説していく。
1.ライフサイクルに注意
1は、「導入時」「運用時」「更新時」といったシステムのライフサイクルに注意すべき、という項目である。特に「運用時」には、ログファイルの整理やバックアップ手法、ディスククラッシュ等のハードウェアトラブルへの対応方法など、うっかりと確認し忘れることがある。また予算の都合で、つい機能面ばかり追いかけて、運用時に必要な機能を用意しない場合もある。また、将来、更新を行う際に、他のシステムへデータ移送ができない構造になっていないかといった点も重要で、データ移送機能がないばかりに、ベンダに高額な移行費用を要求され、特定ベンダにロックインしてしまう例もある。
2.複数の視点を持つ
当然ながら、情報システムには、複数の人間がかかわることになる。単なるユーザや、管理・運用者、といった役割毎に、システムがどのように使われるべきか、どのように見えるか、といった点からの確認が必要である。また、予算を担当する人や、経営層から見て、システムが、必要なコストに対し、有益なものであるかどうかを示すことが可能か、といった視点も重要である。
3.使い勝手は細部に宿る
神は細部に宿る、という格言があるが、情報システムにおいても同様である。仕様書やシステム概要を見る限りでは、十分に使えそうなシステムであったにも関わらず、実際に出来上がってみると、使いづらいシステムというのは存在する。これは、画面表示やページ遷移等のユーザインタフェースやアクセス速度、といった細かなことの積み重ねによって生じる問題である。仕様の段階では、確認が困難でもあるのが難しい。仕様に「反応速度はXX秒以内」や、「画面にはXXの情報が記載されていること」といった制約をかけるのが精いっぱいであるが、これを細かに行うことは大変な努力を要する。しかし、これが大切なのだ。
4.複雑化させるな
情報システムは、ユーザからの要望を受け入れていくと、際限なく複雑化するものである。しかし、複雑なシステムは脆弱であると同時に、維持管理や改変・修理が難しい。ユーザの要望が本当に必要であるか、を見極めな、場合によってはユーザのやり方を変えることが必要かもしれない。社会で広く受けいられている仕組み(コモディティ)を使ったシステムは一般に安く調達できるし、長期にわたり安定的に導入が可能である。しかし、特殊な仕様のシステムは、特定の期間はチヤホヤされるが、長期的に生き残れるかが疑問であり、更新までを含めた長い目で見ると採用は難しい。ライフサイクルまでを考えると、複雑化・特殊化は大きな問題で、既存システムを使ってできることが重要である。
5.ドキュメント化を怠るな
システム導入で最も難しいのが、適切なドキュメントの作成である。システム導入担当者にとっては当たり前のことでも、初めてシステムを触る人間にとっては問題となるような点は、実は多く存在する。そういった点をきちんとドキュメントに残すことが重要である。最近は、1年前の自分は他人と同じ、と思えるほど、記憶力に自信がなくなった私であるが、こういった場合にも、ドキュメントを残すことは重要である。ちょっとした機器間の依存関係や接続情報をメモに残し忘れたがために、数時間の保守作業が必要になった、といった例はザラにあると思う。何を残すべきか、といった点は、ある程度経験が必要であるが、ポイントを絞ってドキュメントを記述することは大切である。
ちなみに、このエントリを書く前に検索で知ったのだが、平成18年に経済産業省が「情報システムユーザースキル標準」を提案している。この中には、「IS導入スキル」というものもあり、本エントリに関連する内容も記載されているが、読んだだけで活用できる、というよりは、評価に使うための指標として示されているだけである。
情報処理推進機構(IPA)が「ITスキル標準」を推進しているのは知っていたが、この一環となるものであろう。何にせよ、なんらかの指針があることは良いことと思う。
結局、軽めに書こうとしたつもりが、結局数時間をついやしたエントリになってしまった。反省。