デプロイメントスキルの重要性
社会では必要とされるスキルが日本の教育からすっぽりと抜け落ちているために、ITシステムの企画・運営に失敗してしまう、という事例を身近に感じることがある。
重要なスキルとして、挙げられ、かつ教育から抜けていると日々感じるのは
- コミュニケーションスキル
- マーケティングスキル
- デプロイメントスキル
の3点である。
コミュニケーションスキルについては、他でも多く述べられているので、ここでは詳述しない。
マーケティングスキルとは、製品やシステムを開発・販売する際、「誰が」「どうして」「何のために」使うのかを考える能力であり、それを調べたり、逆に生み出すことが求められている。マーケティングも、義務教育では教えられていないだろうが、高等教育では、それなりに分野が確立している。マーケティング、という言葉自体も、十分に広まっているので、重要性も認知されているといえよう。
デプロイメントスキルとは?
さて、デプロイメントスキルである。出来上がった製品やシステムを単に導入するための能力のことを指しているつもりは無い。ユーザの利用形態や導入方法を十分に検討した上で、製品やシステムのデザインに反映させる能力のことをこう呼びたい。さらには、将来の製品のために、規格や仕様の標準化を行う能力もこれに含まれるといえよう。すなわち、将来のユーザまで含めて、ユーザがその製品やシステムを「どうやって」導入・運用していくのか、までを考えることのできる想像力が必要となる。
デプロイメントスキルの習得には、現場での様々な体験と、その時々の技術レベルでの細かな工夫の積み重ねの経験が必要であり、他のスキルのように講義や演習では身につけづらいものであるのも確かであろう。
しかし、このように貴重な「現場の知恵」を日本は軽視する傾向があり、特にIT分野ではこの傾向が顕著であるように思える。故に、現実のデプロイメントを軽視した製品やシステムが登場したり、日常的な運用が困難なインテグレーションが提案されることになる。逆に、スキルが無いあまりに、過剰防衛に走り、過大なリソースを投資してしまうこともあろう。
また、現場の技術者であっても、自分たちが重要な「デプロイメント」作業をしているという意識が低く、日常的な作業に甘んじてはいないだろうか。
「現場の知恵」を大切に
「ものづくり」の現場では、QC活動といった現場の知恵を大切にし、業務改善を行い、製品に結びつけるような活動が行われている。
IT分野においても、現場の知恵を大切に「デプロイメントスキル」として昇華させるような仕組みが必要であろうし、そのようなスキルを持った人が製品・システム開発に関わることによって、より高品質な製品・システムの実現が可能になるのではないだろうか。
私自身は、現場の人間という意識があるわけではないが、現場を近くから見ているものとして、ぜひとも考えなければいけないポイントだと思っている。
みなさんはどうお考えだろうか?