金沢の二人の芸妓さん
帰るのが夜遅くなる私は、テレビを観る習慣がめっきり減ってしまっていますが、あんまりインターネット上のニュースばかり見ていると情報が偏ってくるので、NHKオンデマンドを利用してニュースや社会情報番組をたまに観てます。
公共放送なんだから受信料払っている人は無料にしてほしいところですが、まあそれはおいといて・・。
先日、NHK金沢放送局の制作で、「にっぽん紀行 金沢 芸妓ふたり」という番組をやっていました。
江戸時代から続く茶屋街で、70歳を過ぎてなお現役で活躍するふたりの芸妓を取り上げた番組です。
※金沢では芸者のことを芸妓(げいぎ)と呼びます。
ここに登場する峯子さん(84)と乃莉さん(77)は、現役のディレクター時代である20年前に地元民放の特集番組で追っかけた二人で当時から金沢で一番の小鼓と笛の遣い手でした。
西と東、主計町の三つの茶屋街(要は昔の遊郭なのですが)が残る金沢では、それぞれの芸妓組合も健在で、西の芸妓のボス(笑)が乃莉さんで、そりゃもう怖かったです。
当時、伝統芸能のレギュラー番組を持っていた私は、全部の茶屋街へ毎週のように仕事で通っていましたが、色恋とは全く無縁の芸と秩序の世界に触れていました。
このお二人の芸で、金沢の伝統音楽を代表するのが「一調一管」で小鼓と笛の楽器のみで、能などの曲を表現するものです。
文字でその魅力を表現することは到底できませんが、一般的に退屈な伝統芸能の中で、毎年即興に近い形で曲をアレンジして変えてゆくだけに、表現も現代的で感情表現も豊かです。
この音楽はもっと世間に広まってもいいのにと思いますが、残念ながらネットには映像も情報も殆ど無いのが現状です。
(魅力が全く伝わらないやる気のない紹介ビデオが一つある程度)
インターネットもそうですが、ソーシャルメディアが流行ると地方でも多くの人達がサイトを作ったりブログを書いたりされています。
ところが、残念なことに東京の真似をするパターンが多いのではないかなと思います。
あとは、技術的に地方の魅力を出し切れていないのも残念です。
金沢の芸妓のお二人は80歳になっても、その演奏の魅力は変わることなく、迫力もわびもさびもある素晴らしい音色を聞かせてくれます。
しかし、問題は後継者がいないことで、今でも「一調一管」といえばこのお二人です。
地元での需要はあるのですが、二人で充分な量であることが後継者の育成を妨げています。
番組で出てきた芸妓のみなさんは、知っている方が多くみなさんご健在であることをうれしく思うとともに、この素晴らしい文化が伝承されていくのだろうかという心配も募ります。
ソーシャルメディアは様々な可能性を秘めていますが、世界を均一にすることが目的ではないと思います。
逆に多様性を認めて、まだ陽の目を見ていないいろんな地方の魅力を伝えるものであって欲しいと思います。
自分の持つ技術も、こういうところで生かせる時がくるといいのになと思って書いてみました。