メディアは「メッセージ」であり「マッサージ」でもある
あけましておめでとうございます。野水です。
本年もかわらぬご厚情をいただけますと幸いです。
新年ですからちょっと大きな話をしてみます。^^;
「メディアはメッセージである」とメディア論の大御所マーシャル・マクルーハンは言ってます。
マクルーハン以前、メディアと言うものの認識は、テレビ・ラジオなどの所謂「マスメディア」であり、マスメディアが影響力を持つ方向性は、そこで放たれるメッセージの内容に依存するというのが一般的な解釈でした。
ところがマクルーハンは、「問題なのはメッセージではない、新しいメディアができれば、それ自体がメッセージであり人々を変えてしまう」としたのです。
このマクルーハンの言葉を学んだのは大学時代ですが、その後インターネットが登場し世の中は変わりました。
(ちなみにマクルーハンが脚光を浴びたのは1960年代ですから更にずっと前ですね)
メディアとしてのインターネットの特徴は「マス」だけではなく、「n対n」のコミュニケーションが可能になったことです。
マスメディアは、発信源が限られます。
ですから統制が楽ですが、逆に時の権力者に利用されます。
ナチスや大日本帝国の悲劇は、マスメディアが大きな役割を果たしていることは間違いないです。
でも、ネットは違います。権力者が統制できません。
では誰が統制するのかといえば自分自身です。
権利には義務が伴います。インターネット社会になって、情報の選択権も発信権も誰でも持てるようになったのに引き換え、私たちは情報を選別する義務と発信する責任を負っているわけです。
そういうことを言うと、「めんどくさい時代になったなあ」と思いますよね。
自由ってめんどくさいんです。
ともあれ、インターネットで情報は氾濫しました。
しかし情報の氾濫は何も今に始まった話ではありません。
マスメディア時代でもテレビの多チャンネル化や雑誌の氾濫によって、同じように「情報の氾濫」で処理しきれません、と言われてました。
そこでマクルーハンさん、今度は10年後くらいに今度はこんな本を出します。
「メディアはマッサージである」
マクルーハンさん、正確には学者ではないんですよね。
理論と呼ばれてはいるけど、緻密でもなければあんまりロジカルでもない。どっちかというと文章は詩的で情緒的で、この本に至っては半分以上がビジュアルで、タイトルからしてパロディ。
この本の意味は、「情報が多チャンネル化すると、文字だけではなく五感で感じるあらゆるものが身体に入ってくる。だから浴びろ!感じ取れ!」みたいな感じです。(かなり乱暴なまとめですが)
インターネットの出現でも、クラウドサービスの氾濫もおんなじパターンですね。
もはや、自分の手元に届く情報は、自分が処理できる範囲を遥かに超えています。私の場合でも、メールは読まずに消すもののほうが読む方より遥かに多いし、他の社員の日報は秒速2枚位で流していってます。
facebookなんてまさしくシャワー状態で、タイムラインに降り注ぐコメントや写真を「浴びる」感じです。
そこで選んで読むことも確かに大切なんですが、解読せずに「浴び」て、マッサージのように情報に揉まれることもまた大切なんではないかと思います。
「メディア」の定義は「人と人とのコミュニケーションを媒介するもの」ですが、もちろん言語だけとは限りません。
写真も、音楽も、道路も、空気もメディアです。
ネット回線が太くなって、端末性能が上がり、スマートフォンが出てきてカメラもビデオもマイクも全部入りで、個人単位でも言語以外の情報のやり取りが簡単になって、まさしく「理解する」ではなく「感じる」レベルになりつつあります。
技術革新はまだまだ終わらないですから、近い将来「匂いのついた焼きたてのハンバーグ」の映像で女心を鷲掴みにする料理男子や、海外旅行で撮った360度映像をその場で共有して、眼鏡をかけた友人が同じ景色を自分の視点で見ることができるなんてそう遠くないうちに実現するでしょう。
で、何がいいたいかというと、「理解しようとするよりまあ感じればいいんじゃない?」っていうことです。
昨年もたくさんの方にお世話になりました。講演もたくさんさせていただきました。
一昨年までは、講演タイトルに「クラウド」が付くものが8割以上だったのですが、昨年は「ワークスタイル」が6割を超えました。
クラウドはワークスタイルを変革する手段ですから、目的のほうへ関心が向くのはいい流れだと思います。
ただ、バブル世代、理解しようとして身体が拒否して考えるのをやめてるパターンが多いのではないかなと思います。
冒頭に書いたように新しいメディアの登場は世の中を変えます。
変えたくない人も大勢いるとは大勢いるとは思いますが、新しいメディアが登場した時点で変わることは宿命なのです。
なので、バブル世代ができることは、変わる時代に適合するか、世捨て人になるかだけです。
自分でも驚きなんですが、1ヶ月ほど前に50歳になりました。
今年は50代最初の年ということになります。
子供の頃、50歳の自分はもう人生大概やること終えて、余生をのんびり暮らすおじいさんのイメージでした。
ところが現実は、子どもの進学などで人生で最もお金を稼がなくてはいけない数年間の始まりです。多分バブル世代の多くがそうでしょう。
バブル世代と銘打ったブログを書いているんですから、同世代にエールを送りたいところなんですが、正直私も必死です。
そんな中で、年末の紅白の小林幸子さんを見てかなり心動かされました。
元々下積みが長く、おもいで酒で売れ出すまで15年もかかった苦労の人ですが、数年前に事務所トラブルからまた仕事がなくなりかけ、ニコニコ動画に飛び込んで、そこで支持を得て再びテレビの世界に帰ってきました。
15年下積みがあったとはいえ、売れ出してから30年以上紅白に出続ける超大物歌手です。
プライドや経験や今までの価値観が邪魔をして、普通はニコニコ動画に自分で投稿とかできないと思います。
でも、彼女は(私より12歳も年上なのに)あそこで弾幕を「浴びた」んです。
ニコニコ動画のテクノロジーも、ネット民の行動特性も書いてある会話も、最初はわからなかったのだと思います。
でも感じることで何かが生まれたんだと思います。
そして、自身の経験や蓄積された技と重なって、初音ミクの「千本桜」とは違う、紅白の歴史を刻む小林幸子の「千本桜」が生まれたんだと思います。
年取っていくんですから記憶力も理解力も鈍ります。
まあ、それは認めましょう。
でも感性まで失いたくないです。
あと10年、もしくはそれ以上働き続けるためには、まだまだ変わらないといけないのだと思います。
ワークスタイル改革を説いて、バブル世代に働き方を変えて幸せになろう!と言っている身としても自分こそ変わる姿をちゃんと見せないとかっこがつきません。
クラウドも、働き方も、エバンジェリストとしても、カメラマンとしても、理解するより先に、今年はまずは環境のシャワーをあびてみようと思います。
いろいろ新しいご提案やお話がありましたら、ぜひご紹介ください。
というわけで、ワークスタイルの情報のシャワーを浴びてみませんか?お申し込みまだ受付中です。
2016 第4回 ITACHIBA会議
『70歳まで幸せに働く方法と、幸せに働ける企業経営を考える』
~自分なり、企業なりのワークスタイルを見つける190分~
日時:2016年1月15日(金)18:00~21:10(開場は17:00)
場所:サイボウズ株式会社 日本橋オフィスカンファレンスルーム
東京都中央区日本橋2-7-1 東京日本橋タワー 27階
定員:100名
参加費:無料(懇親会は有料)