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もしも洞察力があったなら……。

最終回 マクドナルドで学んだ10のこと

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約2年勤めた日本マクドナルドを昨年末に退職し、本日まで自称サバティカル・フリーランス・ブロガーとして細々と活動を続けていた玉川ですこんにちは。晴天続く初夏のゴールデンウィーク真っただ中の皆さん、ご機嫌はいかがでしょうか。さぞ海や山や空へと様々に楽しまれていることと思います。

さて、退職時に職場のメンバー数名に勝手に約束したことがありますので、満を持してそれを本日は果たしたいと思います。たった2年間ですがお世話になったマクドナルドの皆さんへのエールをこめて「マクドナルドで学んだ10のこと」を気の向くままに記してまいります。

1.B2BとB2Cの違い

B2BでITの事業会社から移ってよく聞かれるようになったのは「B2BとB2Cは何が違いますか?」でした。私自身、マクドナルドに入社して最も気づかされたのは「お客さんが違う」ということです。B2Bは法人相手なので、どこまで行ってもKBF(Key Buying Factor)は組織的であり、論理的であろうとします。例えば機能性能はどれがよいか、予算内におさまるか、ROIはどれくらいか、戦略に即しているかどうかなど多面的かつロジカルに購買の意思決定がなされます。

しかし、B2C、特にマクドナルドの場合、お客さんが「そうだ マクド 行こう」と起き上がって「ビッグマックを食べるのだ」と鼻息荒くお店に行ったとしても、目の前に「チキンタツタ」の期間限定商品POP(Point of Purchase)がでかでかと掲示してあったがために、カウンターでそちらを注文してしまうことがあるのです。つまり、そのお客さんが本当にその商品を買うかどうかはその時まではわからない、ロジックよりも感情が左右していくというのがとても大きな違いでした。それ故に、事業計画はロジカルでありながらも、それ以上にお客さんの感情に働きかける様々なコミュニケーションがお店の内外で行われていました。推計で年間8億個のハンバーガーを国内で売っているわけですから、マクロとミクロのコミュニケーション戦略がとても重要なわけですね。

2.カウンターの向こうは小さな宇宙

1971年に日本でマクドナルドが事業を開始してから47年。これまでに推計300万人のクルー(店員)が従事してまいりました。とはいえ、マクドナルドのお客さんのほとんどはカウンターの向こう側に行ったことはありません。幸運なことに、私はたった3週間でしたが研修の一環のためお店で働くことができました。

さて、お客さんから見るとお店というものの役割とは、注文してお金を払い、商品を受け取り、食べ、ごみを捨てて帰るというシンプルなものでしょう。

しかし、カウンターの向こう側では客席からはなかなか見ることができない様々な仕事が連携して小さな宇宙のバランスをもたらしているのです。その日に使用する食材の調達とストック、使うハンバーグ類の調理する人、フライ類の調理をする人、カウンターやドライブスルーでの商品受注を厨房に伝えるシステム、受注商品の初期セッティングをする人、流れ作業で商品を作る人、飲み物を作る人、商品と付帯品を取り揃えて注文通りにお客さんに提供する人などなど。その時間帯の責任者の指揮のもとそれぞれの細分化されたポジションについて緻密に連携を行うのです。

なお、私が経験したお店は埼玉県の朝霞三原店でした。素晴らしい仲間に恵まれながら仕事をし、また、友人仲間が20数名からかいに遊びに来てくれたのがとてもうれしかったですね。

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*マクドナルド朝霞三原店・2016年5月撮影

3.とにかく手を洗う

たかが手洗い、されど手洗い。私の知る限り、創業以来マクドナルドで食中毒が起きたことはありません。クルー(店員)は皆、お店に入るとき、食材以外の何かに触れた時、あるいは一定の時間間隔で手を決められた手順に従って洗います。洗います。洗います。爪をあらかじめ切り、爪ブラシさえ使って洗います。手洗いのマニュアルもきちんとあります。

---以前、どなたかが手袋をしたほうがきれいなんじゃないの?と言っていましたが、手袋をしていたとしても頻繁に取り換えず、ほかのものを触った手で食材をいじったりしたら手を洗わずに作業をするのと同じです。私の経験では、手袋をしているお店のほうが食品衛生が鈍感に映ることがあります。

とにかく、マクドナルドでは素手の清潔さを徹底し、きちんと手を洗い、清潔に、安全にお仕事をしています。

4.ピープルビジネスという本質

誤解を怖れず書くならば、マクドナルドのお仕事は老若男女どなたでもできるお仕事です。もちろん熟練度の差はあるでしょうが、誰でも働くことができて、誰でも成長の機会が得られる、そういう職場環境です。つまり、マクドナルドのお仕事に参加してしまえば、ずっと、世界のどこでもこの仕事をしてステップアップのチャンスを得ることができるということです。このように敷居が低く、一生、世界のどこにいても働くことができるレストランってそうそうないと思うのですよね。

ピープルビジネスとは、もちろんレストランのサービスが人で成り立っているという意味ではありますが、実は人生の仕事を得られる職場でもあるわけです。人で成り立ち、人の生き方にかかわる。それがすごく大きな発見でした。

5.圧倒的な認知度

日本でマクドナルドをご存じない方はほとんどいません。ブランド認知度調査によると99%をたたき出していて、これは日本のどんな企業ブランドよりも高い数値です。ご存知日本発最大手の自動車会社よりも高いスコアなんですね。であるがゆえに、親近感が高く、1億2千700万人老若男女に様々な価値観において楽しまれてきました。

好きも嫌いも含めて皆の中にそれぞれのマクドナルドがある。なんというすごいブランドなんでしょう。その分、一挙手一投足が耳目を集めてしまうわけですね。

6.スマイルな会社

スマイル0円というメニューを見たことがありますか?お客さんのおもてなしはこのスマイルなしには成り立ちません。マクドナルドはスマイルカンパニーといってもいいくらいあちこちにいろんな笑顔を目撃しますね。すごく忙しいお店ではその余裕がないこともままあるようですが。。。

それでも振り絞って笑顔で接してくれるクルーに出会ったなら、ぜひ笑顔で返してあげてください。キャンディーズの「微笑み返し」のように。

7.問題・課題ではなくオポチュニティ

マクドナルドでは何か直さなければならないことがあったときにそれを「問題」とか「課題」とは言いません。すべて「機会点(opportunity)」といいます。つまり、何かまずいことがあった場合でも、適切に、的確に対処すればそれは学びの場になるし、より良い品質やサービスにつながる可能性がある、という解釈からなんですね。私もなるべくこの言葉を使うようにしています。 

8.本社勤務は甲子園の出場校

全国約2900店舗の店長や副店長は概ね本社またはフランチャイズ企業の社員です。何年かレストランでお仕事をして目覚ましい成果を上げてきた人たちの中で希望をすれば本社勤務への道が開けることがあります。つまり、プロパーで入社して今本社で勤務している社員の多くは、まるで全国マクドナルド甲子園大会のような激戦を勝ち抜いて登用されているエースの集団なのです。現場をよく知り、人脈を持ち、頭の回転も速く、素早く様々なことを実行していくことができる集団なんですね。

普通の会社だったら意思決定から実行までに1か月は必要なこともあっという間に対応をしてしまいます。具体的には少し控えますが、とにかくそのスピードと実行力には舌を巻くばかりです。

9.データ・ドリブンとKKD(お客さんを知る力)

マクドナルドは楽しいプロモーションをたくさん行っていますが、何もノリやカンでこうしたことを展開しているわけではありません。全国のお客さんから得られる情報、ご意見などを徹底的に集めて分析をし、優先度の高い施策を素早く打ち出しているのです。つまり、KKD(経験と勘と度胸)も少しはあるかもしれませんが、あくまでもデータドリブンなんですね。確かな情報があるから、実行の迫力が出てくるのです。

10.無添加ビーフ100%

忘れてはいけません。マクドナルドのハンバーガーのパティは100%ビーフです。まぎれもありません。私自身工場の見学に行きましたし、さんざ現場の方のお話を伺ってきました。ものすごくまじめな方々が、食の安全に細心の注意を払い、無添加100%ビーフのパティを作り続けています。

ついでに言うと、自称有識者の中でも誤解されるのがポテトです。ポテトは100%ジャガイモを切って作ったもので、粉末を成型したりとかはしておりません。とかく認知度の高いマクドナルドは火のないところに煙が立ちやすい、都市伝説が生まれやすいのが玉に瑕ですね。いずれにしてもお客さんもいろんな方がいらっしゃる中で、丁寧に対応しているマクドナルドの皆さんに拍手とエールをお送りしたいと思います。

これからも、皆さんの愛すべきマクドナルドをよろしくお願いいたします。

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2018年4月30日 玉川拝

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