【広報かるた】・【い】インタビュー、やってもやっても記事が出ない。
【い】インタビュー、やってもやっても記事が出ない。
大事なことを言おう。
貴方の所属が、よっぽどの注目企業か、日本の政財界を左右するほどの重大な企業の広報でもない限り、取材を組んだからって記事が出るとは限らない。
広報駆け出しの頃(私の場合は1992年)は、記者にアポが取れただけでも嬉しくて、記者と自社のスポークスパーソンとインタビューを組んだ日には、「この仕事、最高!」とワクワクしてくるわけだ。
しかし、現実はそう甘くない。記者がスポークスパーソンと会ったからって、即記事になるとは限らないのである。記者から「取材したいんだけど」(時々ぶっきらぼうな方もいるが、広報を担う諸君は気にしないように。たぶん、悪気はないはずだ。いや、仮にあったとしても、そんなの気にしていたらこの仕事では身が持たない。)と連絡があった場合はともかく、こちらから投げかけた場合は、媒体の取材・編集方針やその記者の取り扱いたいトピックと照らし合わせてマッチングが行われることになる。すなわち、何度も言うが、取材=記事(またはOn Air)ではないのである。
ちなみに、広報の世界ではちょっと便利な言葉に、「予備取材」というものがある。これは、記事などにすることを目的としない情報収集のための面談を指す。簡単に言えば打ち合わせであり、個別勉強会のようなものである。予備取材の場合は、テレビならカメラ来るなど連れてこないで、ディレクターや記者と取材トピックの確認や説明を相互に行う。
予備取材の便利さとは、すなわち、気を抜いたり手を抜いたりこそできないが、言質(一語一句の証言。コメント。)を取りに来ているわけではないので、大抵終始和やかに進む。多少技術的に踏み込んでも充分解説する時間が与えられるなど、専門的な分野で仕事をしている事業者からすればありがたいことこの上ない。
さて、大事な提言をしよう。インタビューは、数打てば当たる、というものではない。先述のように、マッチングが最も大事なのである。しかしこれは、記者の興味に合わせてなんでもかんでも、知っていることも知らないこともしゃべって会話を楽しむ、ということではない。むしろその逆だ。スポークスパーソンとして話すべき内容で勝負し、自分が専門としていない内容を憶測や思い付きで話してはいけないのである。もちろん、コンプライアンス上、事業戦略上守秘しなければならないことは、もちろん話してはいけない。
したがって、もしも、「インタビュー、やっても記事が出ないなぁ」と思うことがあったら、自らの準備に課題があったのだと認識をすべきである。記者の勉強不足や準備不足を責めてはいけない。広報は、記者の「Readiness」(態勢)を整えるのも仕事の一つなのである。新任の記者だったら、事前に概要をまとめて、それをもとにレクチャーをすればよい。広報は、記者が良い質問をインタビューでできるように事前にコミュニケーションする必要があるのだ。賭けてもいい。この準備をするかしないかこそが、インタビューの成否を分かつものだと。
ところで外資系広報の諸君。もうひとつ大事なことを言おう。
本社から偉い人が来たからって取材を組むのはやめたまえ。やむをえずそれをした場合に、記事が出なくても誰かを責めてはいけない。これは日常だ。
本社から来る偉い人が、記者やその読者、視聴者が関心を持ちそうなトピックを引っ提げてやってくるからこそ、マッチングを行い、事前に打ち合わせをして、取材に臨むのだ。成功確率を上げたいのなら、貴方は単なる「セットアッパー」ではなく、「戦略広報パーソン」にならなければならないのだ。
次回は【う】。