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もしも洞察力があったなら……。

「私も違うと思っていました」と言ってはいけない

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*この話はフィクションです。そういう風に読んでいただいたほうが都合がいいので、そうさせてください。

とあるプロジェクトのレビューミーティングがあったとします。レビューするのは貴方の会社の役員とか本部長とか。限られた時間の中で自分の取り組んで入り仕事の成果を伝えて、最終的に「素晴らしい。この調子で頑張ってくれたまえ。時期が来たら昇進や昇給も考えよう。」なんてことを言ってもらいたいわけです。

ところが現実はそう甘くありません。なかなか言ってもらえないどころか、大変残念なプレゼンテーションに終始してしまうこともあるでしょう。このプレゼンに向けて、昼夜を問わず準備をしてきたのにもかかわらず、です。

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さて、プレゼンをより説得力のあるものにするために直属の上司と相談しながら作っていた貴方は、その上司から「もっとこういう資料をそろえたほうがいいよ」とか、「もっとこのへんをアピールしたほうがいいよ」とか、大変ありがたいアドバイスを受けるでしょう。しかし、中には「どうしてこんな資料をそろえなくてはならないのだろうか。なぜこんなことを言わなければならないのか。時間の無駄ちゃうか」と疑問を持つかもしれません。しかし、貴方は上司の命令かと不承不承、そのために時間を割き、一所懸命資料を完成させます。

渾身の出来栄えとなった資料をもとに、プレゼン本番に臨みます。レビューをする役員らはビジネスの達人ですから、きっと貴方に矢のような質問を浴びせてくることでしょう。はじめのうちは調子よく応じていた貴方も、とある想定外の質問にひるんで対応に窮してきます。そのちょっとした変化を百戦錬磨の役員が見逃すはずがありません。すかさず究極の一言を投げかけます。

「これ、意味あるの?止めたほうがいいんじゃないの?」

そして、すっかりひるんでしまった貴方の口をついて出てきたのが
「あー、そうですね、私も止めたほうがいいと思っていました。」

一同、シーンと静まりかえります。

貴方はなぜその場が静まり返ったのかが理解できません。そして、自分に無理難題を課した上司に責任転嫁することでちょっとした安堵感を覚えています。

当の上司に目をやると、顔を真っ赤にしています。きっと怒っているのでしょう。

(・・・しかし、実際には怒りよりも恥ずかしさで真っ赤になっていました。)

そして、暫く経ちましたが、何も起きません。どうやら貴方の昇進や昇格はちょっと先の話となってしまったようです。

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勝手なことを書きましたが、ものすごく簡単に言うと、

プレゼンをして、突っ込まれたときに、事情はなんであれ「私も違うと思ってました」の類の発言は厳禁です。

それを言った時点で、貴方は責任を回避したつもりになるかもしれません。しかし、現実に起こるのは、貴方の上司と役員・本部長からの信頼という株の大暴落なのです。

役員の質問は想定内外様々なことがあるでしょう。しかし、最後まで真摯に、自信をもって答え続けることが不可欠です。そして、役員の言う「意味があるの?止めたほうがいいんじゃないの?」は<それをやらなければならない適切な理由:Justification>を求められているにすぎない、と思うようにしましょう。

一般論ですが、企業はJustificationできないことをやることを許されていません。そして、Justificationできないことを延々と人前で説明する、挙句の果てに自分も違うと思っていた、では、皆の貴重な時間を無駄にしてしまったと思われても仕方がありません。残念なプレゼンは、えてして「無駄な時間を使った感」を参加者に与えてしまうものです。

レビューなどのプレゼンの本番では、予め決めた自分の役割を演じきることが重要です。中にはディベートをイメージする方もいます。個人的にとか、本心がどうかではなく、今、その立場に立っている位置から、自らの主張を繰り広げ、そして、質問や突っ込みにも果敢に対応していく、ということが期待されるのです。

ディベートは少し大げさかもしれませんが、「実は本心は反対側のチームを支持したいのだよ」と言われても周囲はしらけるばかり、ということです。貴方の役割は事前に準備した主張を貫き通さなければなりません。もし、どうしても相容れないのなら、準備の段階で、その上司や仲間と議論を尽くさなければなりません。この議論は、成功するプレゼンのために必須のことと言えるでしょう。

そして、いったん本番の舞台に立ったのなら、たとえどんなにつらくても「私も違うと思っていました」と言わないよう、日ごろから鍛錬するようにしましょう。

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