バントをする四番バッター
“「超具体化」コミュニケーション実践講座”を読んだ。速読しなくても90分程度で読了可能な、簡潔でなじみやすい内容だった。コミュニケーションの本質に迫りつつ、具体的な事例を用いながら理解の壁を取り払うためにどのようなアプローチをするべきかを示唆している良書という感想。
さて、何事においても、複数の人々と物事を進めるためにはチームワークは欠かせない。そのチームワークを醸成するためにはどのようなコミュニケーションを図るべきなのか、悩んでいる人は多いと思う。
私が体験した範囲だけでも、よいチームというのは、個々の価値観は様々なれど、共通の将来像(ヴィジョン)をもち、個々への承認行為が頻繁で、かつ役割が明確。そして、評価やフィードバックが明確であるというものだ。
このことを、野球チームにたとえてみよう。チームの将来像が「大会で優勝すること」であれば、目先のゴールは「試合に勝つこと」だ。選手9名とコーチや監督が一丸となってこのゴールにたどり着くためには、「個々が責任を果たすこと」が必要となってくる。そうすると、
野球チームを考えてみてください。貴方が監督をしていたとします。前の選手がヒットを打ち、一点差で負けている場合、次のバッ ターにバントをさせなくてはなりません。それがたまたま二番バッターだったら、二番バッターはバントをするのが役割なので、気にしません。しかし、た
またま四番バッターの場合もあります。そのときに、「ぼくは四番バッターだからバントはしない」と言われたら、チームとして勝利を収めることはできません。
しかし、日ごろから、「チームに貢献する、チームが勝つことが一番大事である」ということをきちっと伝えていたら、四番バッターだとしてもバントをするはずです。(「超具体化」コミュニケーション実践講座116pより)
野球チームによっては、「野球を通じて健全な肉体と精神をつくる」ことや「ファンのために魅せるプレイをする」ことの優先順位が高い場合もあるので必ずし もすべてのケースに当てはまらない。しかし、大事なのは、そのチームのヴィジョンとゴールはなにか、そしてそれがきちんと選手(実行するメンバー)の腑に 落ちているかなのだ。そのためには、リーダーやインフルエンサーを自負する人たちは、弛むことなく対話を続けるべきだと思うのだ。
もちろん、この「対話」とは、一方的に話すことではなく、少なくとも話した分、できれば8割、相手の話を聞く、というアクションを指している。
ところで、この本の核心は、優れたコミュニケーションには論理性や具体性が必要で、これができ始めると仕事のパフォーマンスも上がりますよ、というものである。決して野球の本ではないのでご注意を。