【あの夏の思い出】恐怖の宿 in フィリピン
<本エントリーには一部の方が不快に感じる表現を含んでいる可能性があります。ご注意ください。>
このブログはエントリーのカテゴリーが多岐にわたっているくせに、なぜか「ククルス・ドアン系」(四方山話)が多い。
今日は、その中でも「ククルス・ドアン中のククルス・ドアン」とでもいおうか、ばんちょーからのお題である。
夏の思い出、といえば夏休みの思い出、といってもいいだろう。それは、良くも悪くも、強烈に記憶に残った出来事を指しているのと同義とさせてほしい。
中学生の頃、フィリピンの観光島、セブ島に父と二人で旅行したときのこと。
現地に到着してその日、昼間は、澄み渡る青い海でシュノーケリングを楽しみ、地元の料理を味わいながら、異国情緒を楽しんでいた。(ちなみに当時は香港に住んでいたのでどこにいても異国情緒だったわけだが)
島の夜は早い。未成年だったので夜出歩くわけにも行かず、空が暗くなるとほどなく消灯時間を迎える。宿泊したホテルは一般的な洋館ではなく、リゾート地特有の、ビーチ沿いに点在するバンガロー風のはなれ。そういう意味では贅沢な旅であった。しかし・・・
恐怖はここから始まった。
旅と遊びに疲れたこともあってか、父はさっさと電気を消して眠ってしまっていた。私もさしてすることがなかったので、ベッドに横たわって目をつぶる。真っ暗で何も見えないが、静かな波音が心地よいBGMで私を夢の世界へ誘おうとしていたそのとき
何か音がした
その音は、小さくて、きっと都会の喧騒では聞き逃してしまいそうな小さな音。
カサッ。
最初は、なんだろう、きっと風の仕業か何かか。そう思っていた。
気にせず眠ろうとしていると、また
カサッ。
今度は少し大きい。はっきり聞こえる。しかし、いやまて、大きいというよりも、
近くで聞こえる。
いやいやいや。気にしないぞっと、その正体を確かめることなく再び眠りにつこうとする。しかし、
カサッ。カサッ。
おぉ、今度は同時に複数の音。そして、あろうことか、
ボトッ。
とかすかな鈍い音が。
そしてそれらの音は次第に数が増えて、部屋のあちこちでカサッ、ボトッ・・・と合唱をはじめた。
たまらなくなって、いよいよ電気をつけてみた。
そして目に飛び込んできたのは、ちょっとしたホラー映画。
ベッド中に、いや、正確には床にも、
大きな百足が這い回っていた。
数は数えられない。数える余裕なんかない。心は「ぎゃー。」と叫んでいた。
百足はどこから来たのか。そんなの一箇所しかない。天井を見上げる。再び心は「ぎゃー。」
天井から降ってくるのだ。天井は、コンクリートなどではなく、いわゆる茅葺(かやぶき)のような、自然の屋根。
夜行性なのか、彼らは、暗くなると活動を開始する。そして、うねうねと這い回り、つるっとすべって、地上に舞い降りてくるようだった。よりによって、ベッドの上に。
父は、それでもグースカ眠っていた。以前から小さいことに無頓着な人だったが、ひどすぎる。彼をたたき起こして、首筋を這っていた百足を払い落としてあげた。
目を眠そうにこすりながら父の一言は「ああ、こりゃひどいな。片付けてもらおう。」
ということで、フロントに電話をして、係りの人に大体片付けてもらって、部屋の状態は振り出しに戻った。しかし、根本的な解決にはなっていない。結局電気を消すと、数は減ったが百足はまだ降ってくるのだ。
私はシーツをかぶって、眠りについた。外で眠ったほうがましなんじゃないかと思いながら。
結局その宿には二泊した。
あれから二度といっていないのは、言うまでもない。