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もしも洞察力があったなら……。

空気を創るという戦略

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オバマの勝利も、オムツもピロリ菌も戦略PRだった
と触れ込むのは本田哲也氏の上梓した「戦略PR」。彼の論ずるは、「空気を創る」ことが広報の真髄というもの。つまり、商品を世の中に普及させたいときにするべきことは、その商品そのものの情報ではなく、その商品が世の中に提供する価値(効能)を必要とする機運なのだった。この機運を本田氏は「空気」を創る、というわかりやすいキーワードで解説する。

永谷園の事例が興味深い。
同社が生姜スープを発売した当初、生姜スープは生姜スープでしかなかった。しかし、生姜が体を温めるという効能に着目。世の中には、女性を中心に体の冷えに困っている人たちがたくさんいることから、体温と生姜の関係についてリサーチをし、その情報を女性誌、情報番組を中心に提供をしたのだそうだ。その結果、冷えに悩む層を中心に生姜ブームを引き起こすことができた。結果、店頭に並ぶ生姜スープがヒット商品になった。(本文要約)

本田氏は、現代の広報で成功するためには、次の三つの要素が欠かせないと説く。
それは、

  • おおやけ
  • ばったり
  • おすみつき

というもの。

おおやけは公共性。皆に共通の関心事であること。
ばったりは、偶然であること。
おすみつきとは、影響力のある人によるエンドースメント(支援や推薦)

これらの要素がうまく絡み合うと、ブームは沸き起こる、としています。
そう、つまり、戦略PRによって、空気すなわち商材がブームになるための機運は、創ることができるのだと。

さて、本田氏は興味深いことに、戦略PRの失敗例についても後半で触れていました。引用をします。

  • 商品により過ぎた戦略PRテーマを設定した(話題広がらず)
  • 商品から離れすぎた戦略PRテーマを設定した(商品に落ちず)
  • マスコミ、口コミ、インフルエンサーをコントロールしようとした
  • 誤ったマスコミ、口コミ、インフルエンサーを巻き込んでしまった
  • マスコミ、口コミ、インフルエンサーへの感謝の念を忘れてしまった
  • 広告やプロモーションとの連動を誰も考えていなかった
  • 戦略作りは良かったが、実行時にセクショナリズムが邪魔をした
  • 中長期的な視野を忘れ、ついつい短期的な売り上げへの貢献だけを考えてしまった

現代の戦略広報では、コミュニティとどうかかわるかによって成否が左右されると言えるでしょう。この視点に立つと、例えば自己アピールしかしない人は好かれません。自分がアピールするのと同等、あるいはそれ以上に市場の話に耳を傾けることが重要と考えています。

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