「リストのチカラ」。使い倒したい、この一冊(その1)
堀内浩二氏の「リストのチカラ」(ゴマブックス)を拝読。“読む本”を超えた、“使う本”に出会うのは久しぶりです。ハウツー本で秀逸なものは、もちろん沢山ありますが、一味違う。この本には、「リスト」という叡智のフレームワークを、実例を交えながらどのように作り、使い、メンテナンスをしていくかのノウハウが満載。よりよく生きるための方法を編み出す、いわば珠玉のマニュアルなのです。
ここでいうリストは、箇条書きされた言葉の集合体でありながら、それらをきちんと活用することで目的の達成や成功をより確実なものにするチェックリストといいかえてもいいかもしれません。堀内氏は次のように定義をしています。
本書でいうリストとは、「~カ条」、「~つのコツ」、「~つの原則」、「~訓」、「~戒」といった、箇条書きの形にまとめられた知恵やコツのことです。
冒頭では典型的で、なるほどというリストを例に挙げながら、こうしたものが私たちの人生に役立つものだということを解説しています。目からうろこの示唆がありましたので、本文より引用します。
良いリストは人生の財産である
良いリストは役に立ちます。人は昔から知恵をリストにまとめ、語り継ぎ、活用してきました。それらは学術的に正しいかどうかはわからなくても、時の試練を経た、経験的に正しいリストです。良いリストは貴重品です。網羅性があって、メッセージに深みがあって、それでいてシンプルで、覚えやすい。そのように内容も形式も優れたリストは簡単には生まれません。まず、作るのが難しい。多くの人がうなずくような知恵を見つけて、まとめて、リストに凝縮するには、それなりの思考と表現のスキルが必要だからです。次に、価値が認められるのに時間がかかる。多くの人がいろんな状況下でその知恵を使い、長い時間をかけて修正されたり拡張されたりしながら、良いリストとしての評価が定まっていくからです。(中略)
聞いたことは、忘れる。
見たことは、覚える。
やったことは、わかる。
(後略)
シンプルな言葉遣いでありながら、核心を突いている。そして、モレやダブり感がない。論理的に正しく(真実、という意味ではありません)、観念的に納得がいくもの。それが著者の言うリストなのだと納得。同書には、沢山のリストが掲載されていますが、その中で、特に勉強になったのはとあるグローバルカンパニーのリスト。
「トヨタの7つの習慣」
1. けた違いの発想から入る--一割削減ではなく、ゼロをひとつ取ることで無駄を見つける
2. わが社を主語にしない—プロの目ではなく、お客様の目でモノをつくる
3. なぜを五回繰り返す—原因でなく、真因まで改善する
4. 成功体験をリセットする—他人の成功より自分の失敗から知恵を出す
5. 成功より成長を目指す—人を変えるよりシステムを変えることで人をつくる
6. 忙しさを恥じる—動きの速さより着手の早さで競争力をつける
7. みんなの力を心から信じる—非凡な一人ではなく、平凡な100人で堅実経営を実現する
著者は、さらに、「1.けた違いの発想」をするために、改善の原則に関するリスト「ECRS」を挙げています。
改善の原則「ECRS」
Eliminate(やめる、捨てる、除く)
Combine(統合、結合)
Rearrange、Replace(並べなおす、または置き換える)
Simplify(簡単、単純にする)
巨大なエクセレントカンパニーがなぜ今日に至ったか。数多の叡智が集結、集約されたノウハウ。同社成長の秘訣がここにあるのかもしれません。
(続く)