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もしも洞察力があったなら……。

うそつきは得をするのか--新ゲーム理論で読み解く人間関係の裏事情

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書籍の読後感想をはじめてしたためます。

私にとってゲーム理論は、映画「ビューティフルマインド」(2001年、主演:ラッセルクロウ)を観てから急速に身近になりました。映画はもちろん、この理論も結構話題になったので、私も何冊か本を読んで勉強をした覚えがあります。今日ご紹介する本は、そうしたゲーム理論をもう少しコンパクトに、そして、新しいフレームワークを取り入れながら纏め上げています。

ところで、本題の前に。

111207_0750私のとある友人は、ビジネスで起きるほぼすべてのことを男女の恋愛というフレームワークでたとえ話ができる天才でした。たとえば、ある事業の推進でその役割分担について他者と交渉中の際、相手から電話で”折り返し連絡”の伝言を受けたときにも、すぐにはかけません。しばらくほうっておきます。つまり、適度に焦らしてから連絡をするわけですが、なぜそうするかということについて、「すべては駆け引きよ。こちらが好きだ好きだと言い続けるよりも、相手に好かれるほうが幸せ。そのためには、自分が必要とされるボルテージを最大に上げること。すぐに折り返すなんて、まるでその逆の行為ね。」などと解説をしてくれるのです。

興味深いものの、しかし相手はいい迷惑かも。(念のためですが、弊社の者ではありません)

111107_1109 なぜこんな話を書いているかというと、かの「ビューティフルマインド」(映画)でも、均衡論を大変わかりやすく、デフォルメしてその趣旨を伝えているからです。そのたとえ話は、男女が参加するパーティでどのようにして自分が出会いを勝ち取るか、というものでした。ゲーム理論のような論理パズルは、難しく考えずに、身近な事例に触れることで、あっという間に頭に入ってきます。

さて、サイエンス・アイ新書(ソフトバンククリエイティブ)の「うそつきは得をするのか」では、全編がこれと同様のわかりやすさとコンパクトさで、ビジネスに応用可能な理論の構造化と事例を紹介しています。ひとつ引用をしてみましょう。

アンデルセンの童話「裸の王様」より---「うそつきは得をするのか」142-143p

二人組の詐欺師が布織職人として、新しい服が大好きな王様のところにやってきました。彼らは「おろかな人には見えない不思議な布地を織ることができる」といいました。王様は大喜びで注文をします。(中略)

王様の目には(その服は)まったく見えませんでした。そのことで王様はうろたえますが、(中略)本当のことは言えません。(中略)当然のことながら、家来たちにも見えません。しかしながら、王様の前では真実を言い出せずに、(王様と)同じように衣装を褒めました。そして、王様は見えもしない衣装を身にまとい、パレードに臨みました。多くの見物人たちも権力者の前で真実を述べる勇気はありません。そして、同じように王様の衣装を褒めました。そのとき、群集の中にいた一人の子供が「王様は裸だ!」と叫びました。

この童話は、一人一人が、まわりの人たちの沈黙に順応して沈黙を守るという行為は、周囲の人たちの沈黙を一層強化させ、悪循環を引き起こす。そのことで社会からは正論が消え去る、という戒めを物語っています。(後略)

支配的権力が行き過ぎるとこうした過ちを冒してしまう。しかし、それは純真な視点をもてば、改めることができるのかもしれません。どんな組織でも、別の視点を確立することや、自由に意見交換をすることが必要なのだと学ぶことができるのです。

同書は、ゲーム理論の入門者向けに書かれています。ちょっと勉強してみたい、その内容を短時間で知りたいという方には、ちょうど良いコンパクトさだと思いました。

photos by Takeo Tamagawa

<新ゲーム理論入門書>
うそつきは得をするのか--新ゲーム理論で読み解く人間関係の裏事情

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生天目章 著
発行 ソフトバンククリエイティブ

第1章 社会の仕組みを読み解く
第2章 じゃんけんと三すくみの関係
第3章 人間はどのように行動するのか
第4章 見える相手とのかけひき:ゲーム理論入門
第5章 社会ゲームの裏側
第6章 みんなの意見は正しいか
第7章 繰り返しゲーム:継続的な関係が生む知恵
第8章 うそつきは得をするのか

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