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クラウドの雲の中を視た! IIJのコンテナデータセンター見学レポート

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ブロガー記者募集!松江データセンターパーク見学ツアー」というイベントがあり、2011年10月28~29日にIIJのコンテナ型データセンターを見学させていただきました。


IIJが同社クラウドの中核とすべく注力しているこのコンテナ型データセンターの全体像に関してはIIJの特設ページをご覧いただき、また同じツアーに参加されたブロガーのコムロアヤさん林 雅之さんのブログでも詳しく紹介されていますので、そちらもあわせてご覧いただきたいと思います。


IIJ松江データセンターパーク

・同社のクラウドサービスである GIO 専用のデータセンター
・GIO 以外の用途、個別システム用のコンテナ貸し、ラック貸しはしない
 (11/14追記: 限定的ではありますが、専用コンテナを提供するサービスもあるそうです。)


つまり、データセンターというよりも、クラウドの雲の中の土台であり、クラウドユーザーにとっては、雲の中で見えない(見なくても良い)設備です。

とは言うものの、クラウド利用の際に必ず懸念事項となる設備の安全性やセキュリティ面を確認できる良い機会でした。

まず、IIJのクラウドの土台としての松江データセンターパークが目指したことを要約すると以下の要件とのこと。

・低コスト、省エネルギー
・スケールアウト型の拡張性
・短期間でのデプロイメント

これらを実現するための手段として、コンテナ型データセンターを検討し、本番の事業運用に至っています。

さすが社名にイニシアティブと掲げるIIJらしく、既製のコンテナを導入するのではなく、自社用途に最適となるように独自に企画、開発、設計、製作、実装を行なっています。従い、同じコンテナデータセンターと言っても、コンテナデータセンターの製造・販売を行う会社のものとは大きく異なっている、という印象です。

まず、単にコンテナデータセンターと聞くと、多くの人はこんなイメージを持つと思います。

Photo
携帯基地局の例

・必要な場所にトレーラーで運び込む。
・IT機器、通信機器、電気設備、空調設備もコンテナ内に実装済。
・電源と通信回線をつなげば、即稼働開始。

Photo_2
この基地局の例では、4本足設置で基礎不要。コンテナ上部の排気ガスマフラーから判るようにコンテナ内部に非常用発電機も装備。(燃料も内部備蓄と推測)
設置場所の移動も容易。シャットダウンして電源と通信回線を外してトレーラーに載せるだけ。


ところが、IIJのコンテナ型データセンターは全く異なります。
そもそもクラウドの土台なので後から移動する必要はない。大規模なサーバーリソース需要を賄うのでコンテナを1台だけ設置するということもない。
たぶん、そのような理由から、以下のような構成となっています。

・コンテナには、サーバーとネットワーク機器のみ。
・空調設備は、コンテナに連結する空調ユニット(コンテナ型?)。
・UPSは別の専用棟に集中設置(コンテナではなく通常の建物)
・受電設備や非常用発電機は、通常のデータセンター同様に集中設置。
・コンテナ設置場所は、電気設備棟に隣接した専用の基礎(鉄筋コンクリートべた基礎)上。

Photo_3
全体のレイアウト。電気設備棟を中心に両側にコンテナを各12台、合計24台設置。 外からコンテナが見えないようにフェンスで囲っています。敷地内やフェンスには通常のデータセンターと同様の防犯設備を装備。

Gio
コンテナ本体。この中には前述の通りIT機器とネットワーク機器のみ。GIO のロゴは管理棟の見学コースから見えるのみ。外部からは見えません。データセンターの所在地はセキュリティ上秘密となっているため。

Photo_4
コンテナの基礎部分。管理棟、電気設備棟建設と同時に、全コンテナ24台分の基礎は完成済です。

Photo_5
コンテナと対になる外気冷却空調モジュール。幅と高さはコンテナと同サイズ。長さはコンテナの半分くらい。結構大きいです。
この空調モジュールの外側には、エアコンの室外機に相当する圧縮式冷凍機が設置されています。外気冷却ができない夏の気温が高い時には外気を取り込まず、この冷凍機による冷却空調となるとのこと。

Photo_6
コンテナと空調モジュールの連結部。工場の配管のように大規模。コンテナと空調モジュールは1対(コンテナ1台に空調モジュール1台)なのですが、空調モジュールの保守や故障時対応のために、この連結部は冷風の横流し(笑)ができるように隣接のコンテナとも接続されています。

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コンテナへの配線引き込みのダクト。
電源は基本的には200Vのみ。ほとんどの機器は200V対応しており、送電ロスを最小化するためとのこと。高電圧直流(HVDC)給電は未だ対応機器が少なく、200V AC給電は現時点で最もリーズナブルな選択だと納得しました。
また、コンテナ上部に避雷導線が見えます。コンテナでも避雷対策は怠らずなのですね。

Photo_8
コンテナ内部。さすがレイヤー3屋さん。監視カメラもIPカメラですね。赤いラッパ形状のものは窒素消火設備の吹き出し口。写真のコンテナには通常のデータセンター同様の消火設備を装備。他のコンテナの中にはこのような消火設備を実装せず、消化器(炭酸ガス消化器と推測)で対応しているものもあります。これは、本年3月に出されたコンテナデータセンター関連の通達によって非建築物の扱いとなり、消防法からも適用除外されているからです。サーバー過熱等による火災発生時に対する対策としては、超高感度煙検知センサー (VESDA)の装備しており、管理棟に24時間365日常駐しているスタッフによる初期消火体制が整備されているので問題ないとのことでした。 まぁ、そもそもコンテナという狭い密閉空間であり、可燃物もほとんど無い(ケーブル皮膜等があるかも知れませんが・・)ので、大事に至ることはほとんどありえないでしょうね。 (一部表現修正:11/14)

Photo_9
コンテナ内部。右がラック前面、左はコンテナの壁面。流石に狭い。

(コンテナ内部のラック背面の写真は、セキュリティ上の理由から削除しました。11/14)
コンテナ内部のラック背面側。前面よりも更に狭い印象。

Photo_11
非常用ディーゼル発電機。3台設置予定だが、現在は2台のみ。燃料は24時間分備蓄。



以上、2日間の日程での松江データセンターパーク見学ツアーでしたが、センターの見学は正味2時間程で、後は松江や出雲観光を満喫させていただきました。ありがとうございました。
私自身、IIJのデータセンター、クラウドビジネス(当時クラウドという言葉はなかったですが・・)には1996年から関与させていただいていますが、技術力と長年の運用経験をもとに飛躍的に進化したデータセンターのひとつが、このIIJ松江データセンターパークと言えると思います。

それにしても、データセンターは、事業者によって個性があり、使われている技術、実装している設備、運用も、未だマチマチ、バラバラですね。
データセンターコンサルティングサービスというのも、まだまだ需要があると確信しました。 お困りの方がいらっしゃいましたら、ご連絡ください。(ちょっと宣伝)

EXTRA31株式会社 成迫

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