採用今昔物語 不人気業界の採用を成功させるには
新卒学生の人気企業ランキングをご存じの方も多いと思いますが、人気企業・業界があれば不人気企業・業界があるのは当然のことです。
最近は「ブラック企業」という言葉が浸透していますが、ブラックではなくても人気のない企業・業界もあります。
しかし、企業経営を継続、発展させていくためには新たな人材を採用していかなければなりません。
不人気業界だからといって諦めていては、企業の未来はありません。
今回は不人気業界の採用を成功させるポイントについて、お話ししたいと思います。
●残念ながら昔も今も変わらない不人気業界。
冒頭に新卒学生の人気企業ランキングの話をしましたが、私がリクルートに入社した当時から現在までの約30年のランキングを見てみると上位人気企業は時代によって変化しています。
しかし、昔はランキングトップだった企業がベスト10から外れるということはあるものの、ランキング下位層の企業がトップになるといったケースはなかなかありません。
職場環境の悪さを表現した言葉に3Kがありますが、3Kは「きつい」「汚い」「危険」の頭文字を意味し、主にブルーカラーの職種に使われていました。
その後、「きつい」「帰れない」「給料が安い」という新3Kが登場し、残業が多かったIT業界などで使われるようになりました。
時代によって多少のランキングの変動はありますし、不人気業界に対する印象も時代の流れと共に変化してきています。
しかし、飲食業界やアミューズメント業界などは残念ながらずっと不人気業界のままであるように思えます。
要するに不人気業界と言われる業界は、この30年間大きく変わっていないように思えます。
しかし、不人気業界だからといって人材を採用しないわけにはいきません。
よってそういった業界が採用を成功させるためには当たり前のことですが、諦めではなく、絶対に採用するんだといった強い覚悟を持って採用に取り組む必要があります。
●経営者の魅力こそが新卒学生の心を動かす。
不人気業界でもそれなりの規模があれば、組織力を活かして、素晴らしい採用活動をしている企業もあります。
しかし、中小企業ではなかなかそういうわけにはいきません。
中小企業の場合、まずは「経営者が魅力的であること」が求められます。
経営者自身が今後の事業展開をはじめとした企業の未来像を『学生にとって魅力的に感じるように』語れなければ、学生の心には何も響きません。
ある産業廃棄物処理企業が新卒学生向けのビジネスコンテストを行って、学生の事業への理解・意識を高めて採用につなげているといった例もあります。
ただ、こうした試みで成功しているケースは稀です。
この企業の場合、同業でグループを作り、大学教授に審査員の協力をお願いするなど、準備にもかなり労力をかけています。
ただ単に今やどこでもやっているビジネスコンテストをやれば採用成功に繋がる訳では決してありません。
そして、もう1つの方法として、あえて誤解を恐れずに言うとすれば、「何故、新卒学生を採用するのかを明確にし、新卒学生を特別扱いをする」ことです。
特別扱い=学生に媚びるのではありません。
企業の多くは入社時に一部の社員を特別扱いするのは他の社員とのバランスという観点から横並びにしたがります。
しかし、新卒学生を採用するのは、自社の将来を背負っていって欲しいという思いがあるからだと思います。
であれば、それをしっかりと前面に出すことです。
例えば「幹部候補採用」「経営企画室付採用」といったタイトルを付け、目に見えるカタチで「君は我が社にとって特別な人材」であることを学生自身に自覚させることも大切です。
ただ、そういったことをやり出しますと社内から不平、不満が出る可能性は否定出来ません。
そのために経営者自身が何故、新卒学生を採用するのかの理由を明確にし、説明を繰り返し、社内全員の意識統一を図り、全社で育てていこうとの意識を社内に醸成させる必要があります。
中小企業の場合、それぐらいの覚悟を持って採用に臨まないと不人気業界で採用を成功させるのは難しいのが現状です。
それができないのであれば、新卒学生ではなく即戦力として活躍が期待できる中途採用で人材を確保した方がいいように思います。
●「企業は人がすべて」を真剣に考えた行動が重要。
また、優秀な新卒学生を採用するためには、そもそも採用担当者が優秀でなければ学生への説得力に欠けてしまいます。
しかし、ほとんどの中小企業は優秀な人材を営業などの最前線に配属して、売上げ増を目指そうとします。
これも理解出来ることではあります。
「企業は人がすべて」と言う経営者はたくさんいますが、そうしたことを声高に言っている経営者に限って採用担当者の人選をおろそかにしているケースが散見されます。
残念ながら、それでは採用はうまくいきません。
まずは新卒で入社した社員のサクセスストーリーを作るべく、その社員を大抜擢も含め、数年のうちに自社のエースに育ててしまうことです。
そして、その社員がエースに育ったら、その社員を採用担当者にして、次のエースとなるべく人材を採用していくのです。
この流れがうまく回るようになれば、毎年、優秀な新卒学生を採用できる可能性は年々高まっていきます。
そのためにも経営者自身が今一度、自社の未来像をしっかりと見直し、それを言語化することです。
新入社員を本来であれば、新入社員ではなかなか成果が出にくい自社の主軸になっている事業にあえて配属したり、新入社員だけで新規事業展開をしたりといった、企業の将来の夢をしっかりと全社で共有し、その実現のために新卒学生を採用していくんだといった心構えを経営者自身が強く抱き、自身が先頭に立って新卒採用活動を指揮していくことが重要だと思います。
弊社のお客様で比較的不人気業界の企業様でもこのような手法で新卒採用を成功させているケースがたくさんあります。
言うのは易し、行うのは難しであることは重々承知していますが、私も不人気業界の採用成功のために今までにはなかった斬新な試みを始め、何が出来るかを考え、ご提案し続けていきたいと思っています。
以上、何かのご参考になれば幸いです。