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予定しないで話し始めることが良い結果を招く理由

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プレゼンのとき、ついつい自分が考えている以上のことを話し始めてしまったことってありませんか。
そういうときの心の中は、「なんでこんなこと話しているんだろう。でも止まらない...」。分かっているのに口が勝手に話している感覚です。

一方で、もしトップが記者会見やメディアで予定外のことを話し始めてしまうと、広報担当者はお仕事が少し増えてしまうかもしれません。
「トップが記者の前で気持ち良くなって話し過ぎてしまう」というお悩みを持つ広報さんが多いのも事実。外向けの場合は可能な限りトップに念を押しておきたいものです。

しかしそうでなければ、実は無意識にわき出てくる言葉には良いことがあるのです。

センスメーキング理論」を提唱している社会心理学者のワイクは、「何を私が言うかを私が知らずして何を私が考えているかを私がどうしてわかろうか?」という言葉でセンスメーキングのエッセンスを言い表しています。

つまり、これは「話してみるまで私は何を言いたいのか分からない」ということを言っています。

随分適当なことを言っているようで呆れてしまいますが、じつは予定しないで話し始める内容のほうが良い結果を招くことがあるのです。

私は以前、あるNPO団体の代表を務めていたことがあります。組織は60名近くになり、皆の気持ちがバラバラになった時期がありました。方向性を示すために代表として全員の前で話さなくてはならないと考えました。そのとき、追い詰められていたせいもあると思いますが、皆の前でついつい大ボラを吹いてしまったのです。すると全員がその大ボラで盛り上がってしまいました。私が話した直後からメンバーの行動が積極的になったのです。私は自分から言ってしまった手前、その後大ボラを大変な思いをして実現させることになります。でも、「予定していなかった言葉が、想定外の良い結果を生んだ」ということを、やっと今になって解釈することができました。

心理学者のクランボルツは、「人はやりたいことをするために計画を立てる必要はなく、結果がわからないときでも偶然を活用して新しいチャンスを切り拓け」と言います。
偶発的なことを利用して一歩踏み出してみることが大事なのです。

林真理子さんの小説「下流の宴」で、婚約者の母親に低学歴を馬鹿にされたフリーターの女性が、思わず医学部に入ると言ってしまったシーンがありました。彼女は医者になるのですが、そのときの思わず言ってしまった言葉が、自分自身を押し上げたのだと思います。

思わず想定外の言葉を言ってしまったとき。慌てずに一度振り返ってみると、そこに大きなチャンスがあるかもしれません。

【関連記事】
2021/05/25 大ボラで人が行動するのを、理論的に裏付けてみる

【参考文献】
K.E.ワイク『センスメーキング イン オーガニゼーションズ』遠田雄志,西本直人訳,文眞堂(2001年)
J.D.クランボルツ,A.S.レヴィン『その幸運は偶然ではないんです! 夢の仕事をつかむ心の練習帳』花田光世・大木紀子・宮地夕紀子訳,ダイヤモンド社(2005年)

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