同調行動は、実はいい会社を作る
「コロナ渦で出社したくないと思っていても、上司や同僚が会社に行っているので、自分も行かざるを得ないんです」
ニュースを見ていたら、街頭インタビューで会社員の女性がこのように答えていました。
「立場の強い人の意見に流される」
「場の空気を読んで行動を合わせてしまう」
「多数決だと数の多い方に手を挙げてしまう」
多くの人は他者の影響を受けながら生きています。
だから本当は良い意見を持っていたとしても、同調圧力に屈してしまい、自分の意見を曲げてしまうこともよくあります。
なぜ同調圧力に屈してしまうのでしょうか。
人の行動を決める80%は環境だと言われています。人はそもそも組織や社会的なルールに同調的に動きやすいのです。
同調圧力で良い意見や良い行動がスポイルされてしまうのは残念なことです。
しかし、これをマネジメントの視点から考えた場合、同調的行動を上手く使えば組織を良くしていくことができます。
人が同調的に行動しやすいなら、誰かが良い行動をしたり、良い環境を整えれば、組織は良くなっていくはずだからです。
たとえば、家屋の割れた窓ガラスをそのままにしておくような地域では犯罪が多発しやすく、住民が自宅をケアしてゴミを放置させないような地域では犯罪が減る、ということがあります。
これが「窓割れ理論」と言われるもので、秩序の乱れを割れた窓にたとえたものです。実際にニューヨークは無秩序への対処を行い、犯罪が激減しました。
つまり街が整えられているだけで、悪い行動をする人は減り、犯罪の確率も減るのです。
また、「人は『威光模倣』を行う」と教育学者の生田久美子氏は言います。
憧れのスターやアイドルの、話し方や行動、服装まで似てきてしまうということがありませんか。人は、信頼し、自分に対して権威を持つ人が成功した行為、また成功するのを見た行為を模倣するのです。
組織がなかなか良くならないと嘆くリーダーは多いと思います。
人が同調行動をとりやすいということをヒントに、まずリーダーから率先して理想的な行動を始めてみるというのはどうでしょうか。
「そんなこと難しいよ」と思われるかもしれません。
そこで、小さなことから始めてみると良いと思います。
たとえば、自分からニコニコして挨拶する。「元気?」とメンバーに声がけする。メールの返事はきちんとしてあげる。
そういう小さいことだけでも違ってくると思います。
良いリーダーは、割れた窓を直すだけです。
【参考文献】
G.L.ケリング,C.M.コールズ,小宮信夫『割れ窓理論による犯罪防止-コミュニティの安全をどう確保するか』文化書房博文社(2004年)