オルタナティブ・ブログ > 大人の成長研究所 >

ライフワークとしての学びを考えます。

だから、裸婦を描くと頭が良くなる

»

裸婦像(小).jpg

今年のGW中はコロナ渦で外出せず、家でのんびりしていたという方多いかもしれません。
私はもともとあまり人付き合いの良い方ではありませんので、あまり苦になりませんでした。
しかし社交的な知人の方々は辛そうです。我慢できずに外食したり、人と会ったりしている様子を次々とSNSにアップされている方もいました。

ここでいったんコロナの話しは置いて脳の発達だけに話しを絞ると、じつは「社交的な人の方が、頭が良くなる」らしいのです。

分子発生生物学者で人間の脳の発達や精神障害の遺伝的研究者のJ.メディナは、「社交的でない人に比べて社交性の高い人は認知能力の低下率が低く、社会的な活動は脳を活性化させる効果がある」と言います。

ラッシュ大学アルツハイマー病センターの疫学者で研究者のブライアン・ジェームズは、認知症ではない高齢者1140人の認知機能と社交性について調査を実施しました。最も社交的な集団は、最も社交的ではない集団に比べて、認知機能の低下率が70%低かったことが証明されたのです。

どうも、人と会ってお互いに影響を及ぼし合うことが脳を活性化させるらしいのです。

脳科学者の茂木健一郎氏は、「脳は、新しいものを好むネオフィリアという性質がある」と言います。脳にとって退屈な状態は、脳の成長を止めてしまうのだそうです。
他人は自分と違う考え方をしているものです。異質の考え方と出会い、新しいことを知れば、脳のネオフィリアを満足させることができます。

頭は良くなりたいです。でも非社交的な人にとって、ただ何となく人と会うのは気後れするものです。大義名分が必要なのです。

そこで「越境学習」に参加してみるという方法があります。

越境学習とは、会社員が自分の会社組織の枠を超えて(越境して)職場以外で学ぶことを言います。

越境学習というと、大学や専門学校のようなアカデミックな場やNPO団体に参加することでは?と誤解されがちです。もっと気軽なビジネスセミナーや勉強会、お稽古教室などもそれに当てはまると思います。ボランティアに参加するのも良いかもしれません。

知人が趣味で絵画教室に行っているのですが、「裸婦」を描き始めたと言います。モデルがやって来て裸婦を描くという非日常的な体験や、同じ人物を描いているのにそれぞれが全く違った絵に仕上がるというその刺激的な様子を聞くと、さぞかしネオフィリアが満足しているのではないかと思われます。

日本企業は似たような人たちが集まりやすい傾向にあります。越境学習でこれまで会ったことのなかったような多種多様な人たちと出会い、新しいことを学びあえば脳のネオフィリアを喜ばせることができるのです。
加えて越境学習の学びは仕事の視野広げ、人脈も拡大するので、現在の仕事にも役立てることができます。会社に戻っても、ネオフィリアの満足は持続するのです。

今は、オンラインセミナーや勉強会も多く開催されているので、非社交的な人でもそれほど対人プレッシャーを感じずに越境学習に参加できるのではないでしょうか。非社交的な人にとって「学び」は大義名分になります。テーマが決まっていれば話題に困ることもありません。

今後、新たな知に出会い、脳を活性化させていくことは、100年時代を生き抜くための知恵とも言えます。そのために越境学習は一つのポイントになると考えています。

【参考文献】
・J.メディナ『ブレイン・ルール 健康な脳が最強の資産である』仲野香方子訳,東洋経済(2020)
・茂木健一郎『脳と創造性「この私」というクオリアへ』PHP 研究所(2005)

Comment(0)