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ライフワークとしての学びを考えます。

わからなければ、人に教えるとわかるようになる

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一生懸命学んでいるのになかなか成果が上がらないと悩んでいる方は多いと思います

短期間で圧倒的な成果を上げる方法があります。

それは、人に教える(説明する)ことです。

本を読んだり、講義を受けることだけが学びではありません。リクルートワークス研究所・主任研究員の辰巳哲子氏は、「他の人に教えてあげて知識を使ってみることや、人との関わりも学びとして挙げられる」と言います

「人に教える」のは、教える力を十分に備えたその道のプロだけがするものではありません。大人なら誰でも、人に教え、関わると、学びが深まり成長が加速すると考えます。

なぜなら大人は「経験」を持っているからです。

私はコンサルタントという仕事上、人に教える行為をします。しかし、ただ一方的に教えているだけでは成果は上がりません。
特に自分の技術、能力、価値観を超える問題に直面したときがポイントです。この状況を乗り越えるために自分の経験を「総動員」してしのがなくてはなりません。このとき「お客さんの経験」も総動員します。お客さんの声に耳を傾け、なんとか新しい解決策を"ひねり出す"のです。しかし無事しのげて「あ〜良かった」で終わってはいけません。この予期しない結果から自分が学び、教訓を導き出すことができれば、専門性が大きく進化していくのです。

これは営業でも開発でも、皆さん同じだと思います。お客さんに説明し、対話しながら、予想外の良いアイデアが出てきた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

「デザイン思考」で有名な、デザインコンサルティング会社IDEO(アイデオ)のエグゼクティブでもあるトム・ケリーは、「お客さんにアイデアをぶつけていけば立ちはだかる壁は打開される」と言います。

IDEOが新しい鼻の外科手術道具の開発プロジェクトに参加していた時のことです。外科医との議論はなかなかかみあいません。するとIDEOの若手エンジニアが5分ほどいなくなり、「欲しいのはこれですか?」と、ホワイトボードのマーカー、写真フィルム容器、洗濯ばさみをテープで巻き付けた即席プロトタイプを持ってきました。それは子どもの工作のようでお世辞にも上手いとは言えない代物でした。しかし外科医たちは「そうそう、コレだよ!」と膝を打ち、「ディエゴ・システム」という電子メスとなって多くの手術で使われるようになったのです。

このエンジニアは若手ですから経験豊富なプロではないはずです。しかし彼は、自分の経験とお客さんの経験を総動員し、そこからひねり出したアイデアをお客さんにぶつけて、予想外の良い結果を導きだしました。

「省察的実践」の概念を提唱した哲学者、ドナルド・A・ショーンは「現場で実践する専門家の専門性とは、現場の実践のなかに存在する『知と省察』それ自体にある」と言います。

持っている「知」を総動員させて相手に説明し、「省察」で振り返って形(言語化)にする。そのプロセスを繰り返すことで、大人の成長は圧倒的な成果を上げることができます

会社にこもって考えているだけでは学びは促進しません。「まだまだ力不足で恥ずかしい」と思わずに、まずはお客さんのところに言って説明してみることです。

【参考文献】【参考文献】
・D.A.ショーン『省察的実践とは何か―プロフェッショナルの行為と思考』柳沢昌一,三輪建二訳,鳳書房(2007)
・辰巳哲子「学びはアウトプットから始まる〜対話型社会の時代の新たな学び型〜」『Works Review「働く」の論点2019』(2019年7月)リクルートワークス研究所(2019)

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