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ライフワークとしての学びを考えます。

人が恥を恐れてアウトプットできない理由

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青ざめた社会人男性(小).png

「自分で出来ますから大丈夫です」
「私、人に指示されたくないんです」
と、頑なにアウトプットしたがらない方、意外に多くいらっしゃいます。

「失敗して恥をかくかも...」
「完璧に出来るようになってからにしよう」
こんな風に考えてしまいがち。いざ行動しようとしてもなかなかできないものですよね。

一般的には「失敗を恐れずにチャレンジしよう!」「恥をかいても気にしないで!」と言われています。確かにその通りなのですが、分かっていても踏み出せないのが大人なのです。

なぜなのでしょうか。

それは、子どもとは違い、大人が経験の積み重ねによる「自分の物語」を持っているからです。

明治大学教授で心理学者の諸富祥彦氏は、「すべての人にとって、人生は自分の思い描いた理想的な『自分の物語』を実現する舞台であり、『自分の物語』の維持は自己の存亡をかけた一大事となる」と言います。

この「自分の物語」とは、「良い大学を出て一流企業で働くエリート社員の自分」や「都心のタワマン上層階に住むリッチでおしゃれな私」など人によって違いますが、いずれにしても「失敗ばかりしている自分」でないことは確かです。人は、この「自分の物語」を何が何でも守り通そうとします。

最近、知人と一緒に撮影した写真が良い感じだったので、SNSで共有の許可をいただこうとしたとき、「今日は"ブス"だからアップしないで!」と言われたことがあります。

素敵に撮れているような気がしたのですが、察することができませんでした。「いつも美しくある私」という「自分の物語」を守り通そうとされたのです。

人が「恥をかくことを恐れる」のは、このように理想的な「自分の物語」を何が何でも維持しようとするためだったのです。

アウトプットするということは、予測できないことも起こります。相手がどのように受け取るかも分かりません。間違って恥をかいてしまえば、「自分の物語」は維持できなくなります。

ただ、予測できないということは、想像以上の良い結果をもたらすこともあります。また、ネガティブな結果であったとしても、そこで得られた知見を経験と照らし合わせれば、学びを進化させることもできます。このように考えると、アウトプットには恥のリスクはあっても、学びや成長にとって悪いことはほとんどないことが分かります。

でもどうやって「自分の物語」の維持を乗り越えたらいいのでしょうか。

リクルートワークス研究所による「自己信頼」という考え方にヒントがあります。

「自己信頼」は、恥をかいたり、落ち込んだりしたときに見捨てないでいてくれた人物がいたことから、「くじけそうになっても誰かが助けてくれる」という人間関係の信頼から生まれます。それによって修羅場を乗り越えることができた自分に対する信頼が生まれ、未来に対する希望を持つこともできるのです。苦しいときに、友人の励ましや、上司の一言で救われたことがあるかもしれません。

この「自己信頼」が高まれば、困難な状況や人間関係にも飛び込んでいくことができるようになり、「自分の物語」による呪縛を乗り越えやすくなるのです。

恥をかいたと思ったとき。アウトプットしたことをちゃんと見ている人がいます。まずは、ちょっと余裕を持って周りを見渡してみるといいかもしれませんね。

【参考文献】
・諸富祥彦『哲学的探求における自己変革の8段階「主体的経験の現象学」における<エゴイズム>とその克服過程に関する考察』コスモス・ライブラリー(2013)
・ワークス研究所「自己信頼」『Works Report 2012』リクルートワークス研究所(2012年7月27日)

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