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ライフワークとしての学びを考えます。

人はアウトプットするだけで成長できる

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人生で、物事が上手くいかなかったり、伸び悩んでいたりする時期に、「自分はいったいどうしたら成長できるのだろうか?」と苦しむ方は多いかと思います。

「10で神童15で才子20過ぎれば只の人」という諺にもあるとおり、一般的に人は大人になると成長が止まりやすいと認識されています。
「大人は頭が固くて頑固だから伸びないよ」とか、「子どもの方が頭が柔らかくて素直だから伸びるよ」などといった大人の成長に対して否定的な言葉を耳にするのはそのせいです。

だから「学んで成長できるのは若い人。年齢を重ねた大人はすでに学び終わっている。自分は終わった人だ」と思い込んで諦めている人も多いのです。

しかし年齢に関係なく自分を変化させて学びを深めている人もいます。そのような方々はどのように学んでいるのでしょうか?

じつは、大人に最適な学びの方法があります。
それは「アウトプット型の学び」です。

リクルートワークス研究所の辰巳哲子氏も、「現代の学びはインプットからアウトプットに変わり始めていて、アウトプットしさえすれば成長できる」と言っています。

なぜアウトプットが必要か。
それはアウトプットすれば、その反応を元に、「どうすればもっと良くなるか」検討することができるからです。

他人は自分と違う考え方を持っているものです。それに他人の頭の中を把握することなどできませんよね。アウトプットによって他人が反応すれば、自分の知らなかったことを知ることができます。
今まで持っていた考えに新しい考えを加えて検討するプロセスは、凝り固まった考え方をほぐしながら広げてくれます。それは限界を超えるための助けとなり、成長につながるのです。

たとえば、ある営業が顧客のところに行ったときうまく商談がまとまらなかったとします。営業が「なぜ売れなかったか」と振り返り、これまでの経験と重ね合わせて検討します。すると、「顧客とコミュニケーションが不足していたことから顧客の求める価値が把握できていなかった」ことに気がつきます。次からは、顧客のところに行く回数を増やし、コミュニケーションをとることで、顧客の悩みを解決する製品が提供できるようになるというものです。
お客さんのところに行かず、ハウツー本を読んでじっくり考えているだけよりも、まずアウトプットしてしまうほうが学びも大きいのです。

教育理論家のデービッド・コルブは、この営業のようなサイクルを「一度だけではなく何度も循環させることが成長を促進する」と言います。これがコルブの「経験学習サイクル」といわれるものです。

私は、明治大学の大学院でマネジメントの論文を書きましたが、苦労したのは論文のテーマを決めるまでのプロセスでした。実際、論文を書くまでにテーマを4回変更しています。いろいろな方にテーマについてご意見をうかがい、検討し続けていました。最初は明らかにスジの悪いテーマだったため厳しく論破され、傷ついて何度もやめようかと思いました。でもめげずにアウトプットを繰り返すと次第にスジの良さそうなものが見えてきたのです。巡り会った指導者に一筋の光をいただき、それを大切にしながら書き始めました。最終的には、優秀論文に選出いただき、歴代最高得点で修了することができたのです。もしアウトプットせずに、最初に考えたテーマで書き始めていたら良い結果にはならなかったと思います。アウトプットのプロセスは、自分の想像もしない成長をもたらしてくれました。

大人が成長するには、まずアウトプットしてみることが大切だと思います。

【参考文献】

辰巳哲子(2019)「学びはアウトプットから始まる〜対話型社会の時代の新たな学び型〜」『Works Review「働く」の論点2019(20197)リクルートワークス研究所

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