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脳の真実...学ぶ力は加齢で衰えるのか?

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「最近、物覚えが悪くなったなぁ」
こう嘆いている方、結構いらっしゃるかもしれません。

人は年齢を重ねると脳の学ぶ力も衰えると思い込んでいるせいか、とかく「もう年だから、ムリ」と考える傾向にあるようです。とくに、「大人は頭が固くなってダメ」などのメッセージを繰り返し聞かされて、学びへの意欲を低下させられた経験のある方も多いのではないでしょうか。

じつは、脳科学的な見解から述べると、学びに年齢の限界はありません。

脳の可能性を知らないがために、通説に影響を受けて大人が自分の可能性に限界を作ってしまっているのはもったいないことです。まずは己の脳を知れば大人の学びをより効果的に進めることができます。

ポイントは2つあります。

その1 学べないのは脳の神経細胞が減少するからなの?

「年を重ねると脳細胞が減少する」と聞くと、無力感がわき上がってくるものです。でもこれは間違いです。

脳科学による記述も多い薬学博士の池谷裕二氏は、「100歳になっても神経細胞に減少は見られない」と言います。
大人の神経細胞は新生児より少ないことは確かです。でも大人の神経細胞は、新生児の神経細胞の70%が3歳児までに間引きされたあと減少することはありません。人は3歳児の神経細胞を一生使い続けるのです。

学びを躊躇する大人がよく使う「脳細胞が減っちゃったからなぁ」という言い訳は成立しないのです。

その2 年をとると脳は固くなり鍛えられないの?

「大人は脳が固くなり鍛えられない」とよく言われています。年齢を重ねて身体が固くなるのと同じように脳も固くなると考えられているようです。

ニューヨーク大学医学部神経学臨床教授のE・ゴールドバーグや認知心理学博士のP・マイケロンらは「脳は鍛え続けることができる」と言っています。

ちょっと難しい話しをします。

人間の脳は、約1000億個のニューロン(神経細胞)があって、ニューロンがお互いにネットワークを作りながら機能しています。ニューロンは生体電気的な情報を扱う力を持ち、情報はシナプスという連結部分を通じて他のニューロンへ伝わるようになっています。頭を使うと、前頭葉と側頭葉のニューロン・ネットワークが発火し、2つのネットワーク間で情報が交換されます。それによりニューロン同士のつながりが強化され、連結したネットワークとなるのです。このニューロン・ネットワークに繰り返し刺激を与えることで、脳機能は鍛えることができるのです。

たとえば、新たにピアノの練習を始めた人は、ニューロン・ネットワークのつながりが強くなり脳が鍛えられます。でも上手になって楽に弾けるようになるとニューロン活動は低下します。この場合は、さらに難しい曲を練習するなどしてチャレンジの度合いを上げれば脳は鍛えられるのです。

私は以前ピアノをやっていたのですが、楽に弾けるようになった曲はオートパイロット状態になって何時間弾いても疲れませんでした。しかし新しい曲を練習するようになると、ものの1時間でヘトヘトになったものです。

新しい曲の練習でヘトヘトになったのは、頭を使った刺激でニューロン・ネットワークが発火して情報が交換され、脳が鍛えられたからです。これは年齢とは関係ありません。脳を鍛えるにはニューロン同士のつながりに繰り返し刺激を与えれば良いのです。一般的に「ピアノを弾くと頭が良くなる」と言われていますが、上手な状態を維持しているだけでは頭が良くなることはなかったのです。脳は鍛えていなければ衰えていきます。

脳の神経細胞は3歳から減少せず、脳はいつまでも鍛えることができます。脳は無限の可能性があったのです。むしろ「年だから、もうダメ」という諦めに呪縛され、脳の衰えと学ぶ力の低下をもたらしていたことが分かります。

とにかく一番いけないのは通説に影響を受けた結果の「無力感」。
センセーショナルな脳のまやかしに惑わされずに、学びへの意欲を持ち続けることが大切なのです。

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