コンサートの意味について考える
クラシックの音楽は、ヨーロッパから日本に入ってきたものです。
コンサートのもともとの意味について初めて知り、なるほどと思ったことがあります。
「『コンサート』っていうのはただ楽しむだけのものではない。もともとの語源は、ラテン語の concertareから来ていて、『争う』とか『競う』という意味がある。君たちの音楽はただ自分だけが甘えて楽しんでいるだけだ。お客さんをよんで演奏会をするならもっと激しいものだということを感じて演奏しなければだめだ。」
私が尊敬し、9年間もの間お仕事をご一緒させていただいていた指揮者のY先生が、合唱団の稽古でよくおっしゃっていたことです。
日本ではコンサートを「演奏会」と言います。
それまでは、コンサートの意味について考えたこともありませんでしたし、演奏会という言葉から、「楽器や歌を演奏するから演奏会なんだなあ」と漠然とイメージしているだけでした。
Y先生は、ある有名な男性チェリストと、ドボルザークのチェロ協奏曲を演奏したときのことを印象深くお話くださいました。
「チェリストは指揮台の横で弾いているのだけれど、そばで聴いていて驚くほどのうなり声、息づかいが凄かった。左手でチェロの弦をおさえる音がバチン!バチン!と激しく鳴る。人間の本質を伝える魂の格闘だと思った。」
協奏曲はコンチェルトともいわれます。
まさに、ラテン語の競争の意味を強く押し出している言葉だと思います。
また、コンサートは別の意味合いもあり、ラテン語のconcentus(意見の一致)で、英語のコンセンサスの語源ともなっています。
コンサートとは、演奏家達が舞台でハーモニーを一致させ協調性を持って演奏することにも通じています。
つまり、コンサートとは、お互いが協調しながら影響を与えお互いを高め合う(競争)という場なのですね。
演奏会と言うと、単純に演奏する会なのか、と思いがちですが、このような深い意味がある素晴らしい場だったということをあらためて感じました。