最速で上達するために反復練習しない方法
ボイストレーニングの練習で気をつけていただきたいことがあります。
それは反復練習です。
勉強でもスポーツでも音楽でも、それこそ「何事も反復練習」と言われます。
反復練習とは、本当にそんなに良いものなのでしょうか?
以前練習して演奏できるようになった作品をまた演奏してみると、やり始めは「せっかく練習していたはずなのに何かずれている」と思うことが良くあります。「こんな動きでよく演奏できていたなあ」と変に感心してしまうほどです。ずれた動きのまま「何日も、長時間、反復練習し、苦労して、克服し、そして、そこそこは上手くやっていた」ということが分かります。
ボイストレーニングも声帯や横隔膜動と連動した筋肉の動きからなっているもの。久しぶりに演奏してみると、たちまちそのときの感覚が戻ってきます。
一度覚えてしまったずれた動きはなかなか直りません。
「無意識の記憶に対する執念深さ」を感じます。
しかし「明らかにずれている」ということが見えるようになるまで時間がかかりすぎました。
本当は、ずれていることに自分で気がついて、方法を変えていくことが、無駄なく最速で上達するコツなのです。
十種競技をしている武井壮さんが「スポーツが短時間で上達するコツ」について、お話されてたことが大変参考になります。
・・・・(以下抜粋して引用)・・・・
・「スランプ」は動きがずれている。その状態で反復練習をたくさんするので反復練習があまり身にならない。
・ただし、ずれていても反復しているうちに何か覚えてしまって結果は良くなる。しかし、他のことをやったらまた下手になってしまう。
・投げるときは自分の腕は見ていない。打つときも、自分がバットを見てない。スポーツをやるときは、違う視線があって、自分の身体を動かしている。見えていないものを動かそうとしている。
・それは「自分の体を思い通りに動かせていない」ことになる。
例えば、目をつぶって両手を真横にあげようと思っても、できない。どんなアスリートでも少しずれている。それを修正してあげると次からすぐ出来るようになる。この感覚を覚えることが「体を思い通りに動かすことができるようになる」ということ。
・的を狙うスポーツは、 真横をいつも真横に構えられていたら、体調は関係ない。でもそれがわからないと、今日は下がってたりとか上がっていたりとか。いろんなことが起きる。1個ずれててスポーツを習得するのと、1個基準があって、そこから考えてスポーツをするのとでは、やっぱり伸びるスピードがぜんぜん違う。
・自分の身体を思った形にする練習ばかりしている。あとはフィジカルのトレーニングをしている。試合場へ行って、かっこいい飛び方をしているやつの真似をする。
(参照→武井壮が語った「スポーツが短期間で上達するコツ」が説得力あり過ぎてスゴい スランプ対策にも)
・・・・(以上抜粋して引用)・・・・
「ずれていても反復しているうちに何か覚えてしまって結果は良くなる。」→これが、根性で反復練習してしまう原因になっています。そのため、他の作品を演奏したらまた下手になっているのです。
この対策、じつは自分の練習している姿を録画するのが一番分かります。
特に、発声に関しては大変有効です。
声は声帯という身体に内蔵された楽器から音を出すため、自分の声は骨を伝わり耳に届きます。
耳をふさいでいても自分の声は良く聴こえます。これは「骨伝導」です。
でも実際他人が聴く音は、器楽と同じように空気を伝わって届く「気導音」ため、自分が確認できている音とは落差が生じるのです。
だから、「人に聴こえる自分の声は自分では分からない」ということになります。
人は、体の中では骨伝導で響いて聴こえるため、上手に歌えているように錯覚してしまうのが怖いところです。
ぜひ録画をして、ずれた動きを発見し、無駄なく上達していただきたいと思います。