講演も人とアンサンブルすることで新しい発見がある
人前で一人で立つということは、責任が自分一人に集中する瞬間でもあり、孤独でもあります。
とくに演奏会をするというときは、自分が裸にされ、ごまかしが効きません。
自分の出す音や一挙手一投足が見られています。
これは、プレゼンをするときも同じように感じます。
だから、勇気を持って人前に立つ方は、皆さん「偉い」と感じます。
せっかく人前に一人で立つのですから、もし決められた文章を発表するにしろ、棒読みではなく、本当はもっとご自分のスタイルというものを押し出していただきたいと感じています。
バイオリニストの前橋汀子さんが「前橋汀子カルテット」を結成し、ベートーヴェン最晩年の弦楽四重奏に挑戦するそうです。
(ヴァイオリン二人、ビオラ、チェロで演奏する音楽)
日本人のヴァイオリンで素晴らしい演奏者は?と聞かれたら、私は躊躇なく前橋さんの名前をあげます。
それほど、素晴らしい演奏者なのです。
前橋さんはソロでずっと活躍なさってきた方。
ここにきてなぜ室内楽なのかと思いました。
ベートーヴェンのヴァイオリンのソロ(伴奏がついて一人で弾く)作品は、円熟した内容を持つ晩年のものがありません。
ただ、室内楽においては、最晩年のものが存在します。
その作品群に挑戦してみたかったのだそうです。
2014年10月22日日本経済新聞に前橋汀子さんが「ベートーヴェンの弦楽四重奏に初挑戦」という記事がありました。
「ソロは楽しい。4人で弾く方がよほど緊張する。でも今後のために、ここで四重奏の勉強をしておきたい。」
確かにソロは自分のペースで演奏できるのが良い面ではありますが、さすがの前橋さんのコメントだと思いました。
私は、自分の講演では、一人で話す部分と、皆さんにお願いするワークショップの部分を取り入れています。
一人で話す緊張感は特別なものがありますが、皆さんに実際にワークをしていただくと、自分一人では考えつかない発見があり、これもまた大きな喜びでもあります。
弦楽四重奏や、アンサンブルも、緊張こそしますが、人と何かをすることが自分にとっての未知の世界への開発になっています。
講演も、これと同じ要素を取り入れようと構想しています。