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太くドラマティックに響く高い声が出る簡単なトレーニング【レーザービーム・ボイストレーニング】

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高い声はボーカリストにとっては憧れの声でもあります。

ただ、極度の高い声、例えば男声で言うと、パバロッティで有名になった「キング・オブ・ハイC」と呼ばれるようなC5あたりの音や、女声でいえば、C6から上あたりのミやファなどが、太く響く声のまま出せるということは、大変なトレーニングを必要とされます。

そこまでではなくとも、ある程度の高い声を出すためには、「母音の工夫」が必要となります。

歌詞は大事なのですが、ある領域を超えた高さの声になると、歌詞を正直に歌っていてはなかなかベストの声は出ません。

例えば、荒川静香さんがオリンピックで使っていた曲、プッチーニのオペラ「トゥーランドット」より『誰も寝てはならぬ』のアリアで最高音、最後の、「Vincero !」(私は勝つのだ!)の〔e〕では、爆発的な高いシが歌われます。

この音は、出しにくいからと言って、絶対に細い声で逃げてはダメで、太く豊かな響きで歌わなければ意味がありません。
しかし、大抵の歌手は、プロでも「本番にベストが出るかどうか」というほどのキツい音なのです。


普通、しゃべるときというのは、「え」や「い」は、唇が真横に伸びて、舌は上がるものです。
試しに「あ〜え〜い〜」とつなげて発声してみてください。
「あ」→「え」→「い」となるにつれて、舌は上がり、唇は横に平たくのび、口の中は狭くなります。「い」が一番口の中が狭くなりますね。

口の中が狭くては、まず声は響きません。

しかし、実は欧米の音楽で、最高のクライマックスで歌われる母音というのは「え」や「い」が圧倒的に多いのです。

それはなぜか?

作曲家が、「え」や「い」は、実は、声が華やかに響きやすく、高い声が出やすいということを良く知っていたからです。
優れたオペラやリートの作曲家というのは、声楽家ではなくとも、息がギリギリ持つフレージングをよく分かって曲を書いているものですし、声の限界をよくわかっているものなのです。
モーツァルトや、シューベルト、プッチーニ、ベルディ、などは天才的にそのあたりを良く分かっていました。


参考までに、プッチーニのオペラ「トゥーランドット」より『誰も寝てはならぬ』のアリアで口の形をを見てみましょう。下記動画の2:40あたりからご覧ください。

Vincero の[e]の母音、口が思い切り開いて、しかも舌が[e]に聞こえるか聞こえないくらいのギリギリのところまでコントロールされて下がっていますね。

この舌の加減が大事なのです。
ただ、真正直に「え〜!」とか発声してはちょっと違ってしまいます。

「え」や「い」からしか得られない特別に華やな響きは、単なる「あ」とか「お」とかからは得られません。

その秘密は「舌」にあります。

舌に響き(振動)を感じることです。
そして、舌をコントロールすることで、声帯が連動し、高い声が出やすくなります。

そこで、本日は遊び感覚で出来る、簡単なトレーニングをご紹介しましょう。

まず、手始めに、舌のポジションを確認します。
鏡をご用意ください。

(1)顎をしっかり下げて口を開けて「あ〜」と発声する。このとき、舌が十分に下がってスプーンへらのようになっていることを鏡で確認。

(2)「あ〜」と発声したまま、少しずつ舌を上げていきギリギリ「え〜」と聞こえるところで舌を止める。これが「え」のポジションです。はっきり「エ!」と聞こえてしまうところまで行きません。音を良く聞いて、「あ」と「え」の中間くらい。このくらいで十分人には「え」と聞こえます。

(3)そのままさらに舌を上げていき、ギリギリ「い」と聞こえるところで止めます。これが「イ」のポジションです。完全に「イ」ときこえるまで舌をあげてはいけません。自分の声を良く聞いて「え」と「い」の中間くらいで止めてください。

このとき十分に顎は下がっていますか?
そして、舌の形が、スプーンのような形、または、ギョウザの皮に具をつめる前の形状になっているように。
舌の真ん中がゆるやかにへこむカール状になっていること。
「い」のとき、できれば、舌の両脇が、上の奥歯につくかつかないかくらいのところでホールドされるようにしてください。

(4)「い」の母音のポジションが分かったら、それでは「レーザービーム・ボイストレーニング」です。

どんな人でも、高い声で、うるさくならず、太いまま豊かに華やかに遠くまで響く声が出せるようになります。


★★★レーザービーム・ボイストレーニング★★★

(1)ウルトラマンがビームするときのように、片膝をついて、おでこ両手の指を当てる。

(2)あごを下げて息をすう

(3)手を当てたおでこから声を出すつもりで、高い声で「ビイイイ〜〜〜〜ムっ!」と発声。

舌が先ほどの「い」のポジションにくるように。顎が下がって、舌がホールドされているか確認してください。

ポイント1:『ビーム』の[b]をしっかり入れて。(横隔膜を反応させるため)

ポイント2:『ビーム』の「い」は「え」との中間で

ポイント3:「イ」は、遠くの怪獣に命中するように。なるべく長くのばす

ポイント4:舌に響きを感じるつもりで。


最高音に来て出にくい人は、微妙に舌や口の形を調整するだけで出やすくなります。「歌詞のとおり真っ正直に母音を発声」するだけでは、音としては響かない場合が多くあり、プロは微妙に調節して「ギリギリ聞こえる響き」で歌っています。

これは洋楽でも邦楽でも、ポップスなどジャンルが違っても同じです。ぜひ、お試しください。

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