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楽譜が読めると歌がヘタに聴こえるその理由

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これは、ほとんどの人に言えることなのですが、いくら音を正確に歌えていたとしても、いかにも素人っぽい歌い方に聴こえる歌い方があります。

それは、楽譜が読めて歌っている場合です。

私のように、一生懸命、幼児教育から楽譜を読んだり、絶対音感の訓練をしている者としては、「楽譜が読めて何が悪い」と思いたくなってしまいますが、じつは楽譜がスラスラ読めることが、音楽にとってマイナスになってしまうことがあります。

特にピアノ科の人は音符を読む訓練をすべての楽器の中で一番やっていると言っても過言ではありません。
まず、ピアノは圧倒的に音が多い。そしてその多い音を一人で演奏する。そして、すべての音を暗譜で演奏するのが基本です。さらにもう一つ、ピアノは作品の数も多いのです。
そのため、譜読みが遅いと、レパートリーも増えませんし、進みも遅い。いかに人より早く譜面を読んで演奏できるか、というのが一つの能力として求めらてきます。「初見」と言って、初めてみた譜面でも、その場ですぐ演奏できるようにする訓練も行いますし、音大受験では、現代曲の新曲を「初見」で演奏する受験科目もあるくらいです。

しかし、私が歌のレッスンに行った時、先生から言われたことがあります。
「あのさあ、前から言おうと思ってたんだけど、永井さん、音で歌ってるでしょ?」
「ハイ。(当たり前では?)」
「教育が悪すぎるのヨ」
「は、はい・・・。(ええ〜っ?!)」

その理由は、ピアノの人は、音が読めすぎて、つい音で歌ってしまうのです。

「ド・レ・ミ」で正確に歌うことも能力としては必要です。
(これは専門的にはソルフェージュといいます)
しかし、実際の曲を「ド・レ・ミ・・・」で歌っていると、音は正確なのですが、音自体が気になってしまって、音と音の間を歌い込めなくなってしまうのです。

しかし、じつは音楽を聴く人はこの「音と音の間」で感動しています。

楽譜が読めないことでも有名だった、美空ひばりさんは、この「音と音の間」で感動させてくださっていました。

人類最高のテノール、ルチアーノ・パバロッティも「音が読めない」と言われていますが(実はしっかり読めたという話しもあります)音と音の間がすごい。パバロッティといえば、超高音の「ハイC」ばかりが注目されますが、じつは音と音の間が実に考え抜かれていました。音と音の間の歌い込みがあって、初めて「決め」でのハイCが生きてくるのです。

この音と音の間を歌い込むことは、一度ソルフェージュの教育をがっちり受けてしまうと、なかなかその思い込みから抜けることは難しいのです。ピアノ科の人が声楽をすると、専門家には、何も言わなくても「ピアノをやっていた」とすぐわかるくらいなのだそうです。

そういう状況で、いきなり「音と音の間を歌うのよ」と言われてもなかなか出来ないものです。
声帯が反応しなくなっているからです。
しかし、声帯も筋肉運動ですから、トレーニングをすることで、より音と音の間を歌いやすくなります。

そこで「ポルタメント」のトレーニングを行うと良いのです。

ポルタメントとは、音から別の音に移るとき、滑らかにすべらすようにして音程を変えながら移動することを言います。

よく、合唱では「ポルタメント厳禁」と言われています。
ずるずると音程をひきずるとだらしがなく聴こえるし、ハモりにくくなるからです。

しかし、じつは合唱にもポルタメントのトレーニングは必要です。
なぜならレガートといって、音を滑らかにつなげて歌わなくてはならないからです。滑らかなレガートもまた、人の心を感動させるものです。

音と音を移動する瞬間が16分の1秒より早く動くとレガート。
16分の1秒より遅く動くとポルタメント、と人間の耳は認識するのだそうです。

だから、歌の人は基本的に「レガートでもポルタメントの意識を持って歌っている」ということになります。

それでは、ポルタメントのお手軽なトレーニングをご紹介しましょう。

あくびをするときに「ふわ~ぁ」と音が下がりますね。そんな感じをイメージしてみてください。

「3度のポルタメント」です。

3度のポルタメントとは、「ド→ミ」にポルタメントで滑らかに上がって、またポルタメントで下がります。

「ア」の母音でドからミの間をゆっくりと上がったり下がったりしてみましょう。

このトレーニングポイントは、二つあります。
1、リラックスした声から始める
2、「下がるとき」が大事。下がるときは筋肉が急激に緩みやすいので、ゆっくりと下がることです

ドからミができるようになったら、「レ→ファ♯」、「ミ♭→ソ」、「ミ→ソ#」など、少しずつ音をずらして、いろんな高さで試してみてください。

筋肉がストレッチされてポルタメントがかけやすくなり、音と音の間が歌いやすくなります。

★★参照記事★★

音痴ではない 音程を調節するための筋肉に気が付いていないだけ 筋肉を開発する簡単なボイストレーニング

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