それなしにはいられなくなる プレゼンのプロンプター
プロンプターとは原稿表示装置のこと。
プレゼンのとき、パソコンを使用して原稿内容を離れた場所の液晶モニタなどに映し出して使用するものです。
多忙な企業のトップは、スピーチやプレゼン資料を専門の人たちに準備してもらうことがほとんど。
ボイストレーニングのレッスンをしていて感じることは、プロンプターを見ないと話せなくなってしまっている方が多いということです。
プロンプターに頼り切っている方は、「テーマとおおまかなストーリーだけを決めて、後は自由に話してください」と言われても、ほとんどの方が口が動かなくなってしまうのです。
しかも、言葉が出ないので、間が持たなくなってしまう。そうすると間が空くのを気にして「あー」とか「えー」とか余分な言葉を入れてしまがちになってしまいます。
だから、スタッフの作ってくれた資料のないスピーチにおいて、どうしても「あー」とか「えー」とか語尾をのばして間をつなぐ方が多くなってしまうのです。
「そういうときは意味のない言葉を入れずに十分間をとってください。内容を考えてからゆっくり話して大丈夫です。」
と言っても、ずっとそれで慣れてしまった方は、なかなか急には出来ないものです。
プロンプターに頼りっきりになってしまうと、安心なのですが、それを「読んで」しまいます。
「読みながら、さも語るように話す」ということは、なかなか普通の人には難しいものです。やはり「読んでいる」というのは、上手にそぶりを見せずに話したとしても、聞き手には確実に伝わります。読んでいるということは言葉が「棒読み」になりやすく、気持ちが伝わりにくくなりますし、聴衆とアイコンタクトの時間が少なくなります。ひどいものだと、目は原稿に必死で、最初から最後まで一度も目をあわせてもらえない場合もあります。
ある方の結婚式でアテンド会社と打ち合わせを行ったことがありました。そのとき、友人で司会をする方に言っていたアテンド会社の方の言葉が印象に残っています。
「台本を用意しないでください。こういう場ですから間違えがあると大変、と思ってしまうものですが、台本があると、どんな人でも、たとえ練習したとしても『読んで』しまいます。スピーチをする人のお名前とかどうしても間違ってはいけないもののみメモは最低限にして、あとは自分の言葉で話してください。その方が、お客様に伝わります。」
今になってみれば、これはプレゼンテーションと同じだなと思いました。
パワーポイントのスライドには、大事なメッセージだけを書いて、あとは自分の言葉で話せるようにしておく。
このほうが、聞いている人に伝わります。
逆に、「プロンプターを読んで」完璧にお話していたのに、帰り道「あれ?一体どんなことをお話されていたかな?」と思う事のほうが多いものです。
他になさることがたくさんあるトップにとって、資料を優秀なスタッフに準備してもらうことは悪いことではありません。
しかし、可能な限り内容を咀嚼し、出来るだけプロンプターを見ずに自分の言葉で語ってもらうほうが強いメッセージやビジョンを伝えることができます。