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ライフワークとしての学びを考えます。

プレゼン当日にリハーサルをしてはいけない

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プレゼンのリハーサルを行うことは大事なことです。

でも、ナレーションなどのリハーサルは出来れば前の日までに済ませておきましょう。
当日は早めに会場に到着して、雰囲気に慣れておくことや、パソコンがうまく繋がるかなどの確認をする程度にとどめてください。

本番当日は、心配になってしまい、何度もリハーサルをしたり、資料を読み上げたりしがちですが、それをやりすぎると、本番で実力が発揮できなくなります。

ボイストレーニングのレッスン生でも、本番当日にいつもの調子がでていない方にうかがうと、大抵は「当日通しのリハーサルをしました」とおっしゃる方が多いのです。
「より完璧を追求して、どうしてもギリギリまで資料をいじったりしてしまった」と言います。

いけません。

前日までにしっかり準備を終わらせて、当日は、本番までの時間できるだけ気持ちよく過ごすことが実力を発揮するコツです。もちろん仕事が入っている場合もあると思いますが、それでも、本番のことを忘れるくらいのほうがちょうど良い。

なぜか?

それは「ベストは一日に一度しか出ない」からです。

ある音楽コンクールの本選会でのこと。

2次予選までトップの得点で通過し、誰が見てもこの人が優勝だろう、と思う方がいました。
当日の夜行われる本番までに、8名のコンテスタントたちが会場リハーサルを行うのを通しで聴く機会がありました。
しかし、その優勝候補のリハーサルはコンテスタントたちの中で一番出来が悪く感じられたのです。
一瞬、予選までの曲に手をかけすぎて、本選の曲は間に合わなかったのか?と思えました。
しかしふたを開けてみれば、本番ではその優勝候補が圧倒的な演奏で一位。様々な副賞まで総なめにしていました。

そう。リハーサルは完全に手を抜いていたのです。
代わりに、リハーサルで素晴らしかった演奏者は、本番は総崩れで、内容も今ひとつで、入賞する事さえ出来ませんでした。

「若くして、手を抜くなんてとんでもない」とおもわれる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、若くても、ベテランでも、「ベストは一日に一度しか出ない」のは同じなのです。

人は、「今日が本番だ」と思ってしまうと、遺伝子にスイッチが入ってしまうのです。

人間が緊張するとアドレナリンというホルモンが出て交感神経を興奮させるため、呼吸が多くなり、血圧が上がって、食欲も出なくなる状態になります。

人類の昔から、緊張状態というのは、戦うために必要なエネルギーを集中させる反応なのだそうです。敵(人間や獣)が現れたとき、酸素をたくさん送り込み、消化活動を停止しエネルギーを重要な器官に集め、血管を収縮し、攻撃されたとき出血量を抑えるという働きがあります。

また、緊張すると脳波は緊張を示すβ波になり、意識は分散し、考えなくてもいいような雑多なことが頭に浮かびますが、こうなることで、どの方向からの攻撃にも対応でき、あらゆる戦闘方法の対応策を瞬時に探り、選択することが可能になるそうです。

つまり緊張するということは、人間が生き残るために戦闘態勢に入ったことを意味するのです。
生きるか死ぬかギリギリのところで能力以上のものを引き出そうとする生命の知恵なのかもしれません。

遺伝子のスイッチは、一度入ると、自分の実力以上の力・・・つまり120%の力を出してしまいますので、体力を使い果たしてしまいます。この遺伝子のスイッチはできるだけ本番で入れるように、本番で爆発させるようにとっておくのです。

かなりのベテランでも、この本番当日のコントロールが上手くいっていない人が多いと思います。

私は、これは、演奏でも、プレゼンテーションでも、講演会でも同じだと思っています。

講演会やプレゼンテーションの聞き手は心を持った生身の人間です。

自分がベストの状態でないと、人は動きません。

ぜひ、プレゼンの準備は前日までに。
そして本番は実力以上の力を発揮できるように、心の準備に時間を使ってください。

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