プレゼンのスライドは骨太なストーリーを伝えるツールであるべき
企業のプレゼンテーションを見に行くと、大抵は、スライドにたくさんの情報がぎっしりと書かれていて、話し手はそれを読み上げているというパターンが多いように思います。
細かい文字で書かれたスライドは、会場の後方からは豆粒のようで、何が書いてあるのかほとんど分かりません。
もし、前の方で聞いていたとしても、文字と複雑な図形を見ているだけでクラクラとしてしまいます。目をこらして一生懸命起きているのですが、挙げ句には眠くなってしまうことも多いのです。
2014/6/15日経産業新聞に、「『プレゼンの天才』ジョブズ氏も嫌ったスライド頼み」という記事が掲載されていました。
記事によると、シリコンバレーを訪れ、注目される新興のベンチャー企業を3社ほど連続で訪問したところ、2社はスライド無しで、口頭での説明だけ。もう1社は一応、概念についてだけ簡単なスライドプレゼンテーションがあったが、すぐに本題の質疑応答に切り替えたと言います。最先端のハイテク企業こそ相手の息づかいを感じさせる生の会話に近いプレゼンテーションを重んじているのです。
ジョブズは、新製品を大々的に発表するときはドラマチックな演出を行っていましたが、社内の企画会議や他社の説明を受けるときは演出の効いたプレゼンを嫌っていたのだそうです。
・・・・(以下引用)・・・・
何千人を相手にする講演ではドラマチックな演出が必要だが、多くても10人くらいの少人数の会議では、それよりも、製品についてどれだけ自分の言葉で説明できるかの方が重要、ということなのだろう。
(中略)
ひるがえって日本では、ちょっとした企画の説明にも、まずは大量な紙の手元資料が配られ、スライドプレゼンテーションが始まることが多い。大抵のスライドには、やや長文の詳細説明が書かれており、説明者はそれを読み上げ、聞く人々は手元の資料に目を落として、目による対話はない。こんなやりとりなら、台本をメールにして送ってくれた方が手っ取り早い。
・・・・(以上引用)・・・・
スライドを使ったプレゼンは、説明資料を間違えなく読み上げるためのものではなく、骨太なストーリーをより伝えやすくするためのツールであるべきです。
中身について本当に良く分かっていたならば、もしスライドがなかったとしても自分の言葉で語れるであろうし、間違えを気にする事もありません。
もし、台本を作って何度も練習したとしても、中身が分からず、自分の言葉で語れなければ質疑応答でボロが出ます。
プレゼンを社外に向けてするということは、その人個人が会社の顔であり、会社の宣伝でもありますから、良く分かっていて、しっかり話せる人が人前で話せればベストではないでしょうか。
だからこそ、技術者こそ、説得力を持ってしっかり話せるスキルが必要なのです。
私は、大きな会場でのプレゼンであれば、ハコの大きさとお客さんの数や質にあわせて表現方法を変えるべきだと思っています。
大きいところでは、繊細すぎる表現は伝わりにくいのです。ある程度、声のトーンや身振り手振りのしぐさ、アイコンタクトの方法、演出を大きく変えていく必要があります。
また、数人しか入らないような小さな会議室で、大きな会場で行うようなプレゼンをしたら、それはミスマッチです。
だから私は、講演やプレゼンの前は、必ず会場を下見させてもらいます。
つまり、「その場にあわせてどんな表現がふさわしいか?」を見極める力やセンスも必要ということだと思います。
また、内容も、お客さんの立場にたって、どんなプレゼンをしたら喜ばれるかも考えるべきでしょう。
ただ強く説得しようとするだけではなく、共感を得る時代になってきているのだと思います。