IBM歴代CEOのスピーチは声の説得力で人を動かす
IBMの歴代CEOのスピーチを聴くと、いかに企業のトップに説得力のある声が必要であるか思い知らされます。
企業のトップにとって、ビジネスの手腕が必要であることも大切なことですが、不特定多数の人々に信頼感と説得力を持って訴えかける人前でのスピーチ能力が不可欠です。
逆に言うと、ここまでのスピーチ能力をトレーニングしたからこそ、トップを任されるまでになったとも言えます。
もちろん、彼らの声は持って生まれたものではありません。トレーニングで得られたものです。どんな人でも、正しいトレーニングをすればスピーチ能力は上げることができます。
今日は、現米国IBMのCEOであるロメッティ、それから、パルミサーノ、ガースナーについてご紹介いたしましょう。
現米国IBMのCEOであるロメッティのスピーチは声の説得力が抜群です。
声とともに、常に白い歯が見えるほどの笑顔であることがチャーミングな印象を与えます。そして常に聴衆へのアイコンタクトを欠かしません。手の動きも大事。手を広げることで開かれた印象を与えるのです。
これは、日本の企業トップを見ていてもなかなか出来る方がいません。真面目に深刻な表情で話すことだけが、説得力ではないのです。
2004年IBMはパーソナル・コンピュータ事業を中国のレノボ社に売却し世間を驚かせます。そのとき、社内でPwCコンサルティングとIBMの統合に取り組んでいたのが当時グローバル・サービス部門のトップだったロメッティでした。この統合はロメッティ考えるIBMの未来にとって最重要用件だったと言います。
・・・(以下、日経ビジネスオンライン「IBM女性CEOが握る『米国の知能』」より引用)・・・
「ロメッティは、プライスウォーターハウスクーパーの買収が発表された日に、同社社員の電話にメッセージを残したという。内容は、買収後もプライスウォーターハウスクーパーの企業文化の最良の部分を存続させるという約束。その内容とロメッティの声の説得力に、プライスウォーターハウスクーパーの社員らは動かされたという。」
・・・(以上引用)・・・
電話といえば、表情やしぐさ、アイコンタクトは当然活用できません。声だけの説得力がいかにここ一番というときに大切か理解できるエピソードです。
女性といえば、「かわいらしい声でしっとり優しく話す」ことのほうが好印象を与えるという考えは一気に吹き飛んでしまうほどの説得力と重量感を感じます。
一方、パルミサーノは、マスコミ嫌いでも有名です。マスコミを前にしたスピーチはこちら。
マスコミを前にすると、あらかじめ用意した資料を読んでいます。これを見ると、間違いがないように慎重になっているところから、緊張感が高く、呼吸が浅くなっているので、声のトーンが高くなっている事が分かります。声が高くなると、相手は緊張します。また、固くなっているせいか言葉の頭を言い直すシーンもあります。
資料を慎重に確認しているので目線が頻繁に外れてしまうのも惜しいですね。聞いている人が不安になってしまいます。パルミサーノほどの人でも、苦手意識があると元に戻ってしまうのです。
しかし、本来のパルミサーノは、ゆったりとした包容力と、余裕を感じさせる間合いと声を使っています。
社員の前では、これだけのスピーチができたからこそ、グローバルな大企業を統率できたのでしょう。穏やかな笑顔と、開かれたイメージを印象づける手の動きは本当に大切です。
よく、手を後ろに持っていったり、腕をくんだりしてしまう方が見られますが、「何かを隠している」「威圧的」「寄せ付けない」イメージをもたれてしまいますのであまり良くありません。
私が思うには、パルミサーノはできればマスコミの前でも、このような素晴らしい話しぶりをされると、さらにオープンなイメージを印象づけられたと思いますがいかがでしょうか。
もう一人、ガースナーです。
さすが、自然に溢れ出る堂々たる自信と、人間の温かみ、そして年輪と落ち着きを感じさせる話しぶりです。手の動きが意志の力を感じさせます。また、声も一度もトーンを上げることはありません。声のトーンを甲高く上げてしまうと、信頼感や説得力が落ちてしまうからです。
3人のCEOに共通するのは、低くて落ちついた良く通る声。そして、アイコンタクトや手ぶりを加えて、オープンなイメージを印象づけている点です。そして、語尾をしっかりと終わらせて「あー」とか「えー」とか余分な言葉を入れない。
これが出来るだけで、話の説得力は格段に上がります。
皆さんもぜひ参考にしてみてください。
*日経ビジネスオンラインの記事本文に一部誤字があるようです。「プライスウォーターハウスクーパー」→「PwCコンサルティング」