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ライフワークとしての音楽を考えていきます

夢をサイズダウンすることはできない

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10代半ばの若い女性バイオリニストが世界で活躍しているテレビ番組を見たことがあります。日本でその名前を知らない人はいないほどの有名作曲家のお孫さんです。

今では、数多くの世界的エリートバイオリニストを輩出する有名な先生に気に入られて、海外にレッスンに通う毎日。
8〜9時間の稽古。3年ほどテレビも観ていなく、アイドルや俳優さんをまるっきり知らないそうです。ご飯を食べる時間も惜しいくらいの練習をしています。

彼女の努力も素晴らしいのですが、つきっきりで一心同体のお母様が凄いと思いました。

お母様はバイオリンをなさっていたということで、練習に無駄がありません。これは、とても有利なことです。バイオリンやピアノなどは、いかに幼い頃の練習をするかで将来が決まります。身体が柔らかいうちにしか覚えられない技術があり、それは大人になってからではなかなか習得することができません。
また、どんなに才能があっても、やはり子供に練習させるのは至難の技です。そこで、遊び心を持って練習できるように、「上手く弾けたとき」「まあまあのとき」「ダメなとき」と、それぞれ紙芝居のように絵を見せながら練習していたそうです。なるほど、こうすれば単調な練習も変化がつきます。またレッスンにもすべて付き添い、楽譜はお母様の書き込みで真っ黒です。

有利な条件の上、お母様のアイデアにあふれる練習方法。子供がやりたいことには、命がけでも応援するという愛情。そして、入院が必要なくらいの高熱でも舞台に立たせるという厳しさ。

お母様の魂からの行動に深く心をうたれました。




最近、音楽家の知人とお話する機会をいただきました。

「みんな努力しているけれど、難しい世界」とおっしゃいます。

その方は、海外で活躍された期間も長く、世界を良く知っているからこそ、その言葉に重みを感じました。

どんなに才能があっても、恵まれていても、誰もが、努力している。その中から、ほんの一握り、世界に通用する演奏家が選ばれていくのです。

天才少女と言われながら海外に出て絶望し、高価で貴重なバイオリンを暖炉にくべてしまい辞めてしまった人の話をしましたら、「もったいない。ソリストではなく、良いオーケストラに入るとか、どこかで夢をサイズダウンすることはできなかったの?」と言っているのを聞いて、確かに現実的な考え方と思いました。

しかし、たぶん、バイオリンを辞めてしまった天才演奏家は、その方にしか分からない何か深い理由があったのだと思います。

子供の頃は、必死で技術の修行をしたのは無駄ではありません。
人生を歩んでいくための道具の一つであり、誰もが学べるわけではない貴重な技法を教えていただいたのだと思います。

どこで深く納得するか。

もし、自分自身が深く納得したのであったら、それで良いのではないでしょうか。

どんなことでも同じだと思いますが、目の前にある恵まれた幸運を感じ取れる力に気がつくことだと思います。



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