ボツになっていた作品から生まれたヒット
日本映画の最高傑作、黒澤明監督の名作「七人の侍」の音楽。実は、ボツになっていた作品を採用したという事実をご存知でしょうか。
海外でも評価が高く、スピルバーグは、行き詰まったときにはこの「七人の侍」を見ると語っています。また、ジョージ・ルーカス、フランシス・フォード・コッポラ、アンドレイ・タルコフスキーなど、影響を受けた映画監督も多くいます。
この映画音楽を担当したのが、作曲家の早坂文雄さんです。
早坂さんは、最初「侍のテーマ」を20曲くらい用意していったのですが、黒澤監督はどれも気に入らなかったと言います。そして黒澤監督が首をひねっているところに、「こんなのもあるけど」と、部屋のゴミ箱に入っていたぐちゃぐちゃに丸まった楽譜を出してピアノで弾いてみせました。そうすると、黒澤監督は「これ!これ!」と言って、即採用したのだそうです。
ゴミ箱に捨ててあったくらいですから、きっと作曲家自身が、気に入らなくてボツにした作品に違いありません。
このいかにも日本的な迫力あるテーマを聴けば、すぐに七人の侍がイメージできるほど、この映画になくてはならない存在感を示しています。
万が一、黒澤監督が、他の作品で妥協していたとしたら、この曲はきっと日の目を見ることはなかったと思います。
その他、この映画の裏話を調べると、じつは制作費がかかりすぎて打ち切られそうになったところを、撮影途中までのところを経営陣に見せたら「ぜひ次がみたい」ということになり、制作続行になったり、野武士の家が燃えるシーンが撮り直しされていたり、面白いエピソードにいろどられています。
傑作とは、積み重なった偶然から生まれるのです。
魂のこもった作品や仕事とは、ほんの小さなことにも目を配り、積み重ねているのだ、ということを今一度考えさせられます。