社長さんも結構傷ついている
あるマーケティング会社の社長さんと話していたときのことです。
「結構傷ついてるんだよね」
私が社外の人間だからだと思いますが、ふっと寂しそうな表情をお見せになりました。
「社員からキツいことを言われたり、せっかく企画したイベントをことごとく無視されるのは、リーダーの立場として黙っているけれど、結構気にするものなんだよ」
強面で、包容力もあり、思い切った経営をされるという印象でしたので、意外な一面を見た思いでした。
以前、あるNPOの幹事を務めたことがあります。
最初は同じ志で立ち上げたメンバーも、数年経過し経験を積めばいろいろな意見を持つようになります。また、新しく入ってくるメンバーもそれぞれ考えを持っている。それは尊重すべきだと思いました。
「意見があったら何でも言ってくださいね」
そうすると、堰を切ったように次から次へといただく意見。
有り難くもあり、反面、「ここまで言っていいのだろうか」と思ってしまうこともたびたびありました。
「幹事さんなんだから、何を言っても大丈夫」「この人だったら気にしないと思った」と後からうかがい、「結構傷ついていたんだけどな」と思ったものです。
しかし、リーダーの立場とはそういうものなのかもしれません。
一度、何かのリーダーを努めた経験があると、まとめてくださる方に「何でもかんでも」言って良いとは思わなくなります。また、企画してくださるイベントに対しても、気持ちを示すようになりました。
「会社の経営者や、マネージャーの立場にまでなるほどであれば、精神的にタフなはずだから何を言っても大丈夫だ。」
そう思いがちなのですが、意外に本人は傷ついていると言います。
最近有り難いことに、素晴らしい経営者やリーダーの方とお会いしたり、お仕事をお受けする機会をいただくようになりました。
その方々に必ず共通して感じることがあります。
感受性です。
それは、芸術に深い造詣がある、とか、表現力があるとか、そういうこととは別に、とても繊細だということです。ビジネスの現場では不動心であることを貫いておられますが、実は結構傷ついておられることを知りました。
リーダーの立場や権利を乱用してしまうことは良くありませんが、言うべき事を言う、大事な判断する場合など、ある程度の強さも求められることは確かではあります。
しかし、「真心を持って本当に経営を成功させる」ということは、人の心を感じなければできないこと。
素晴らしい演奏家が極度に繊細である反面、聴衆の前で演奏を成功させる図太さも必要であるという難しさ。
やはり、組織も経営もアートなのかもしれません。