なぜそうするの?に「わかんない。ここではそうするのがきまりだから」と答えていませんか
今あるアタリマエが本当にアタリマエなのか?
以前、ベテランの多い合唱団で新しいボイストレーニング方法をお伝えしたときの反応が忘れられません。その場がざわめき、あきらかに拒絶反応に近い笑いが起こりました。
例えば、ボイストレーニングの方法でも、「なかなか良くならない場合なぜなのか?」、「何のためにやっているの?」、「良くなったとしても時間がかかるのはなぜなのか?」、「良くなったときになぜ良くなったのか?」
その問いを続けているうちに、ビジネスパーソンでもできるボイトレの効果的な方法にたどり着き、本に書くことができました。
このときに「昔からこれでやっていた」「皆がやっている」、「人に任せておけばよい」、「とりあえず今は問題ない」・・・
→【だからこれで良いのだ。】
そう思ったとたん、気持ちが楽になり、問いかけることをやめてしまいます。そうしたら、今頃一冊も本に書けるようなことはなかったでしょう。
その「なぜ?」という問いを繰り返し続けている会社があります。
よくコンビニや書店、エレベーター、廊下の曲がり角に見られる防犯ミラーがあります。世界一のシェアを誇る埼玉県川口にある社員16名の小さな会社「コミー」です。
コミーの本「なぜ、社員10人でも分かり合えないのか」に、「なぜ」と問いを重ねることでコミーが成長し続けて来たかが書かれています。
コミーに中途入社4年目、後関さんという方のレポートに興味深い事が書かれていました。
社長の小宮山さんは、新入社員の後関さんに「考え続けることを期待する」と言います。
「なぜ?と考えなさい」「なぜ?と言う習慣をつけなさい」と毎日の朝会、昼礼、社長に会うたびに何度も言われます。
入社したばかりで、覚えなくてはならないことが多い後関さんに、社長は「このやり方はもっと良くならないかな?」と聞いてきます。「仕事に慣れていないときだからこそ、わかりにくいことに気付くし、文句も言える。前任者がやっていたからそのまま続けるのではなく、なぜこういうルールになっているのかと問題意識を持って、考えながら仕事を覚えなさい」と繰り返し言うのです。
そして、後関さんの新しい提案に、何十年も会社にいるベテランの人たちも賛同してくれ、新人の意見が簡単に採用されたのです。
このように、どんな小さな事でも「アタリマエ」と思っていることでも、「なぜ?」を繰りかえし問い続けることが成長につながることを、新人であろうと一人一人の社員が実践できている、そして、実践しやすい環境にある。
すごい会社です。
ここで、思い込みがいかに成長をストップさせるのか、猿とバナナの実験の話しを引用してみたいと思います。
・・・・・(以下引用)・・・・・
生物学者のチームが、サルを使って実験を行いました。
1) 5匹のサルをオリに入れます。オリの真ん中にハシゴを設置し、その上にバナナを置いておきます。
2) 1匹のサルがバナナを取りにハシゴを登ると、残りのサルに冷たい水が浴びせられるように装置をセットしておきます。
3) しばらくすると、5匹のうちのどれかがハシゴに登ろうとするたび、残りのサルたちがよってたかって攻撃するようになりました。
4) やがて、どのサルもハシゴに登ろうとはしなくなりました。ハシゴの上にはおいしそうなバナナがあるのに......。
5) この状況で、1匹だけサルを入れ替えます。新しいサル(新入り1号)はハシゴにまっしぐら。もちろん、残りのサルはこれを許さず、痛い目にあわせます。これを何度か繰り返し、新入り1号は理由もわからないまま、ハシゴに登らなくなります。
6) 再び、古参サルのうち1匹を入れ替えます。ちょっと前に痛い目を見ていた新入り1号は、ハシゴに登ろうとする新入り2号をやっつける側に回ります。こうして古参サルを1匹ずつ入れ替えていくのですが、そのたびにサルたちは同じことを繰り返します。
7) 今や、オリの中にいるのは新入り1号から5号まで。どのサルも冷たい水をひっかけられたことがないというのに、ハシゴに登ろうとするサルをみんなでとっちめる、という行動は結局残ったまま。
8) サルたちに「どうしてハシゴを登る子をいじめるの?」という質問をしたなら、きっとこう答えるのでしょう――「わかんない。ここではそうするのがきまりだから」。
引用:ビジネスシーンで、日常で...理不尽な習慣やきまりごとは、丸のみしないで疑ってみよう! サルとバナナの実験が教えてくれること
・・・・・(以上引用)・・・・・
このように、新しい猿でも、既存の決まり事があるとそのまま思考停止し従ってしまうのです。人間の世界でもありそうな怖い話だと思いました。こうして「ゆで蛙」になってしまうのです。
「コミーのような会社でもしつこく『なぜ?』を繰り返しているから出来るんじゃないの?」「そういう環境になければ、知らないうちにそれがアタリマエになってしまって『なぜ?』と問い続けることは難しいのではないの?」と思えます。
そのために、コミーの小宮山さんは「無所属の時間」を持つのだと言います。
無所属の時間とは?
無所属の時間は山本七平の言う「人は社会のどこかに属し、今という時間にも属している。そのため自分の立場からしか物事を見なかったり、時代の流れにあがらって多面的に考えようとしなかったりする。しかしそれでは新しい発想を得られない」という考えです。
「私は、毎朝、散歩した後、ゆっくりコーヒーを飲みながら、本を読んだり物事の本質を考えたりする『無所属の時間』がたっぷりある。この時間が大切である。」
小宮山さんは、社員の方々にも実践してもらっています。
後関さんは「寝る前や翌早朝、一日の中で発見した「なぜ?」を必ず一つ手帳に書き出すようにしました。家で落ち着いて考えたほうがいいと思い、社長にすすめられた『無所属の時間』を実践したんです」と言います。
この「無所属の時間」を多面的に実行するのが、私の行う「合唱チームビルディング」です。そこでは、皆でハーモニーを作り、ディスカッションを行い、なぜ?どうしたらいいの?を繰り返すのです。
声を出すことで、皆さんの気持ちが開放的になり、仲間意識が強くなって、いつも無口な人からでも、思いもしない良い意見が出ます。
「なぜ?」をやめてしまわないように。会社と一人一人の成長を願って続けていきたいと思っています。