オルタナティブ・ブログ > 大人の成長研究所 >

ライフワークとしての学びを考えます。

リストラ、ノルマ、内部保留、管理職一切なし、巨額ボーナス500万円 競争から共存への経営は幸せに通じる

»

以前、村上龍さんが司会を務める番組「カンブリア宮殿」に、メガネの販売チェーン「21」を展開する、平本清さんが出演なさったのを見た事がありました。
合唱指導をしていることもあり、平本さんの経営方針に共感を覚えました。

平本さんのやり方はこうです。

朝礼、会議、内部留保、銀行借り入れ、左遷、リストラ、ノルマ、内部保留、管理職一切なし。
社員の給与、査定は社内ネットで全社員に公開。
社長は業務をせず、会社に利益を残さず値下げで還元。
そして、巨額ボーナス(冬のボーナス569万円)。

現在、21は広島を中心に全国120店舗以上、年商85億円のチェーン展開をするまでに成長しています。

そして、社是は、「社員の幸福」です。
新入社員から社長まで、社員の幸福のために21はあるのだとおっしゃいます。
お客様の幸福、お客様第一主義を唱えてやまない企業が多い中、21のホームページには「21は社員の幸福を大切にします。社員は皆様の信頼を大切にします」とあるのです。


そこで、さらに平本さんの経営に対するお考えを知りたくなり、平本清さんの著書「丸見え経営」を読んでみることにしました。

その本には、すべて「丸見え」にすることが良い経営と社員の幸福につながるとあります。
会社にとって都合の悪い事はもちろん、どんなことでも隠蔽することが最もよくないという考えです。

だから、社員のお給料や評価も丸見えです。
会社が一方的に社員を評価するのではなく、周囲のみんなが評価する。というシステムが確立していて、お互いがその意識を持つような社風なのです。ただ、評価する人に取り入るのがうまいだけだったり、能力が高くても自分の利益に執着するようでは評価されません。

また、経営方針も丸見え。
小さな案件でも大きくても、社内ウェブで発表し、3日以内に反対意見がでなければすぐに決定します。
21では、社員の多くが出資者なので、株主総会で全会一致で可決するようなもの。平等かつシンプルでスピーディな決定ができます。
もしここで社長が的外れなことを質問したり、利益に固執するような姿勢があると社員から信頼されなくなってしまいます。そのため丸見えの決定システムは、社長や幹部にも責任と緊張感が生じる厳しさも持つのです。

 
私は、「合唱チームビルディング」という企業向け研修を行っています。

そこで、各パートごとに評価してもらい、本来は指揮者が全てを決めるべき音楽方針も、チームの皆が感じるものを引き出して皆さんに決めてもらうという、ブレーンストーミングとディスカッションの時間を持つようにしています。

皆さん、最初はなかなか「他の人を評価する」「自分たちで音楽的な方針を決めて実行する」ということに慣れておられません。しかし、このディスカッションを行った後は、信じられないほど皆さんのハーモニーが生き生きとして、良い音楽になります。私は、あまりたくさんの指示を出さなくても、皆さんが勝手に良い方向に音楽を作ってくださるのです。
その方法をもちいると、もともと持っている皆さんの可能性が発揮され、経験豊富な合唱団でも2〜3ヶ月かかるアカペラ合唱を2〜3時間という短い時間で形にできるようになりました。一人一人が課題に対して真剣に考えれば、物事は今までよりスピーディに解決でき、ベストな結果がでます。

合唱チームビルディングは、合唱によって力を合わせてハーモニーを作り、仕事でも皆さんが幸せになってもらうということが目的で行っています。それは社内だけではなく、経験からつかんだことを仕事に生かしていただき、社外にも、そして業界全体にも広がっていってほしいものなのです。単に「歌って声出して気持ちよかった」だけではないのです。

平本さんの本で「どうにかして水の流れを太くできないか」というお考えに共感しました。

     ・・・・・(以下引用)・・・・・

私はよく「農家と水源」についての話しを引き合いに出します。もともと私は百姓の家で育ちましたから、水の大切さは嫌という程わかっています。いわゆる「水利権」に関しては隣近所でもの凄い争いが起こるのです。川から引いて来た一本の水路があって、それをいくつもの農家共用しているとします。水量が十分なら問題は起こりませんが、季節によっては水が不足することも当然あります。このときが問題です。たいていどこかの農家が、夜中にこっそり他人の水路に立て板をして、自分の田んぼだけに水がたくさん流れるようにしてしまうからです。もちろんそれを知った周辺の農家は烈火の如く怒ります。それこそ殺し合いになるようなトラブルに発展するわけです。そんな状況ですから、いかにして他人の田んぼに水を流さず、自分のところだけに流すかという競争ばかりが激しくなってしまうのです。
これは農家に限った話ではなく、現代のビジネスにも似たようなケースがたくさんあるのではないでしょうか。どんな業界であれ、一定のマーケットの中で激しくシェアを奪い合っています。いかにして自分のところがシェアを伸ばすか。そればかり考えている会社が多いはずです。農家が水を奪い合うのと根本は同じです。もとがビジネスですからその競争に勝利していかなくてはならないという側面も否定はしません。しかし発想を変えて「どうにかして水の流れを太くすることはできないか」と考えてみてもいいのではないでしょうか。

     ・・・・・(以上引用)・・・・・


そんなとき、学生時代の合唱で指揮してくださった先生の言葉が思い起こされます。
「合唱とは満員電車に乗るようなもの。合唱は社会や人生にも通じるのではないかと思う。満員電車に乗ると苦しいが、皆がいるからこそ、安い運賃でも移動できるのだ。」


水の流れを太くし、マーケットを拡大し、競争から共存へ。

そんなビジネスの発想に転換していけたら、これからの社会がもっと幸せになっていくのではないかと思えます。


Comment(2)