「田中角栄さんはどうなの?」 真似しては危険な声
「それでは田中角栄さんはどうなの?」とよく質問を受けます。
「リーダーは低い声で話せ」では、リーダーやビジネスパーソンに必要な声は、低く落ち着いた、良く通る声であると書いています。
田中さんは日本の歴史に残るような大政治家で、同時に独特の悪声で有名です。
残された動画から田中さんの演説を聞いてみると、話術の天才で、思わず引き込まれてしまいます。そして、政治の話しにありがちな難しい内容でも、どんな人にでも伝わりやすく話しています。
簡単な話しでも、わざわざ難しく話してしまうような政治家が多い中で、この話術は最高の強みだったであろうと思います。
そして、あの一度聞いたら忘れられない独特の悪声。
一見、近所にいる八百屋さんのような語り口調で、国民にとって親しみやすさもプラスされ、強烈なキャラクターが確立されていきました。
しかし、これは、田中さんの天才的なずば抜けた頭の良さと、超人的な胆力、政治力なしにはなし得なかったでしょう。
田中さんの場合は、やはりある種の天才であったのだと思います。
なぜモーツァルトが名作を次々と作曲していったかというのと同じように。
ホロビッツという悪魔的な天才ピアニストがいました。
一度聞いたら絶対に忘れられない、最高に魅力的で、強烈な演奏。
どんなピアニストもホロビッツの虜になってしまうのです。
しかし、「絶対にホロビッツの真似をしてはいけない」と言われています。
あれはホロビッツというキャラクターしか成し得ないピアノであるからです。普通の人が真似をしたら滅茶苦茶になってしまいます。
田中角栄さんも似たところがあります。
角栄さんとまったくそっくりの話し方をした政治家がいましたが、どうなったか想像してみるとよく分かるかもしれません。
何事にも例外があるということです。
みのもんたさんや毒蝮三太夫さんらは、彼らだからこそ出来る話術と声なのです。
強烈で魅力的であればあるほど真似したくなる声、話術。
しかし、真似しては危険なこともあるのです。